JCLIF レポート

今日3月5日から中国では年一回の国会(全人代)が10日間の日程で開かれます。
 「四つの全面化」(1:小康社会の全面的構築、2:改革の全面的深化、3:全面的な法治国家の実現、4:党の厳格統治の全面的執行)や「新常態」(ニュー・ノーマル)がもてはやされていますが、政府系週刊誌『瞭望』に掲載された中華全国総工会のナンバー2の李玉賦・副主席へのインタビューが、労働NGOや労働者らの大きな反発を受けています。
 インタビューは冒頭からこんな感じです。

『瞭望』編集部:全面的な法治国家の推進は、労働組合組織にとっては何を意味するのでしょうか?

『瞭望』編集部 : 全面的な法治国家の推進は、労働組合組織にとっては何を意味するのでしょうか?

李玉賦 : 全面的な法治国家の推進派、労働者階級の指導的地位にとって重要な保障であり、18期4中全会の精神を断固実現するものであり、労働組合が法律に沿って労働者の権利を擁護するための法的保障を提供するものです。現在、我が国の改革は攻略および困難な時期に突入し、経済発展は「新常態」に突入し、われわれの党が直面する改革発展の安定という任務はこれまでになく重要なものになっており、矛盾、リスク、挑戦の多さはかつてないほどです。

 労働関係の領域が直面する情勢は複雑に入り組んでいます。労働関係の矛盾はすでに突出時期と多発時期に入っており、争議案件が高止まりしている地方もあり、ストライキと集団的事件も頻繁に発生しています。労働者隊列の構成にも変化が発生しており、要求もいっそう多様化しています。域外敵対勢力の浸透も加速しており、
労使関係を突破口として、違法な労働者の争議行為を組織し、『争議』者が労働組合とのあいだで労働者を奪い合うことを通じて、労働者階級の隊列の団結と労働組合組織の統一を破壊しようと企んでいます。

 ニュー・シチュエーション、ニュー・チャンス、ニュー・ノーマル、ニュー・チャレンジに直面して、各級の労働組合組織は積極的に行動を起こし、広範な労働者が自覚的に全面的な法治国家の推進という偉大な実践に身を投じるように一致団結しなければなりません。」
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インタビューはそのあとも続きますが長いので省略。
インタビューの原文はこちらで読めます。

李玉賦氏は、昨年10月に総工会の執行部に赴任するまではずっと党の規律検査部門を歩んできた方です。
李玉賦氏の経歴(中国語)
http://cpc.people.com.cn/gbzl/html/121000830.html
現在進めれている「全面的な法治化」が、党の規律委員会主導で行われていることから、本当の意味での「法治」からはどんどんと乖離している状態ですが、労働運動や労働法制についても同じような状況にあることが、このインタビューでもうかがえます。

 以下は、香港を拠点に活動している中国労工通訊のウェブサイトに掲載された英フィナンシャルタイムズ記事の中国語訳からの翻訳です。
原文はこちら 
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中国総工会の指導部による「敵対勢力」発言に非難轟々
英紙「フィナンシャル・タイムズ」
2015年3月3日

 中華全国総工会(以下、総工会)の李玉賦・副主席は「域外の敵対勢力」が中国の労働運動に介入している疑いがあると警告した。この発言は人権団体の新たな懸念を引き起こしている。
 中華全国総工会は中国政府が公式に認めている唯一の労働組合で、李玉賦氏はこの組織の副主席(副委員長)、書記局第一書記を務める執行部のトップの一人である。彼がこの発言を行った時期は、NGOに対する新たな法律が制定されようとしている矢先だった。この法律はNGOの審査における警察の介入を強化するものであり、NGOの活動をさらに制限するものである。この法律の法案は現在までに公開されていない。
 雑誌『瞭望』の最新号の(インタビューの)なかで、李玉賦氏は「域外敵対勢力の浸透が加速しており、労使関係を突破口として、違法な労働者の争議行為を組織し、『争議』者が労働組合とのあいだで労働者を奪い合うことを通じて、労働者階級の隊列の団結と労働組合組織の統一を破壊しようと企んでいる」と述べた。『瞭望』は多くの中国の政府役人および党員が読んでいる政府系機関誌である(新華通信社発行:訳注)。
 このインタビューが発表されたのは3月5日から開幕する全人代の数日前であり、全人代においても外国勢力が中国の多くの領域において「浸透」していると議論されることになるだろう。
 李玉賦氏は総工会に赴任する前は、監察部門(党および国家の規律検査委員会)高級官僚を務めていた。
 李玉賦氏の見解は、すぐに中国各地で労働争議を担う活動家らの批判を受けた。広東省の労働NGOの責任者の曾飛洋氏は「私たちは『敵対勢力』などではありません。総工会の活動が有名無実なのです。自分たちの責任も果たせないうえに、労働者のために活動する社会組織を批判するなんて、無責任の上にも無責任を重ねるだけです」と述べた。
 広東省で争議支援を行っている張治儒氏(春風服務部)はさらにこう付け加える。「労働者の総工会に対する『反感』は相当なものです。労働者のためなることを何もしていない。企業の悪事に手を貸していると言ってもいいくらいです。ですから労働者と総工会の関係は疎遠になっていますし、信用もしていないでしょう。」
 中国のミニブログ、ウェイボーでは、李氏の発言に対するコメントが5000を超えており、その大半が李氏の発言を嘲笑するものである。
 中国政府は労働者の潜在力に対して大いに警戒しており、すべての企業組合は総工会の下部組織である。
 去年には、IBMやウォルマートの労働争議で経営が中断する事態に発展した。その後、総工会は労働者に対する管理をいくばか緩めて、労働者が自ら代表を選べるようにしてきた。また拘束されていた何人かの著名な労働運動活動家も保釈された。これらの活動家らはストライキを指導して「社会秩序を攪乱した」罪で刑に服していた。

 

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