会員から

浅沼稲次郎を追悼し未来を語る集会―日本の民主主義の危機を考える

 2015年10月1日(木)開場18:00 開演18:30
 会場:日比谷公会堂

 資料代:500円
 プログラム
  当時の事件映像上映/詩の朗読:神田香織(講談師)
  当時を語る:四谷信子(元都議会副議長・事件当時社会党で勤務)
  ピアノ演奏:崔 善愛
  発言:高橋哲哉(哲学者)/辻元清美(衆議院議員)/辛 淑玉(のりこえねっと共同代表)/平野伸人(平和運動支援センター所長・本島等元長崎市長の影武者)/吉田忠智(参議院議員・社民党党首) 詳細

隣国すべてが友人になるために ―戦後70年、米戦略と安保法制、そして平和を考える― 内田雅敏

 1 戦後70年の光景
2014年7月1日、安倍政権は閣議決定による解釈改憲を行い、これまで憲法上許されないとしてきた集団的自衛権行使容認した。そして関連法案が国会で審議される前に、日米外務・防衛担当閣僚会議(2+2)において日米防衛協力に関する指針(ガイドライン)を策定した。閣議決定は立憲主義を無視した違憲なものであり、新ガイドラインの策定は、国会無視、立法権の侵害である。安保法制については、その内容の曖昧さが指摘されたにもかかわらず、本年7月16日、衆議院で強行採決がなされた。
2013年、安倍政権は、多くの国民の反対の声を押し切って特定秘密保護法を制定し、14年これを施行した。その他にも、国是であった武器輸出禁止原則を緩和し、防衛設備移転三原則を作成した。そして、英国、仏国、豪州らとミサイル、潜水艦などの共同研究、共同開発の協議を始めた。 <詳報> *解放新聞 東京版 第868号 (2015年9月15日)掲載

言葉は形容詞によって腐る―靖国史観が透けて見える安倍首相の70年談話― 内田雅敏

「百年以上前の世界には西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていました。圧倒的な技術優位を背景に、植民地支配の波は、19世紀、アジアにも押し寄せました」。2015年8月14日、安倍首相によって発せられた戦後70年首相談話の冒頭部分である。
 正直、驚いた。「戦後」70年談話であるから、当然、これまでの首相談話等 ― 「日本側は、過去において、日本国が戦争を通じて、中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」(1972年日中共同声明)、「1945年6月26日、国連憲章がサンフランシスコで署名された時、日本は唯一国で40以上国を相手に絶望的な戦争を戦っていました。戦争終結後、我々日本人は、超国家主義と軍国主義の跳梁を許し、世界の諸国民にも又自国民にも多大な惨害をもたらしたこの戦争を厳しく反省しました」(1985年、中曽根首相、国連総会演説)、「先の戦争が終わりを告げてから50年の歳月が流れました。今あらためて、あの戦争によって犠牲となられた内外の多くの人々に思いを馳せるとき、万感胸に迫るものがあります。」(1995年、村山首相談話) ― と同様、先の戦争の反省、それはつまるところ、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」(憲法前文)の精神から導き出されるものであるが、から説き起こされると思っていたからである。
 西欧列強の植民地政策を批判する安倍首相談話の冒頭部分は、「アジアで最初に立憲政治を打ち立て独立を守り抜」いた日本が戦った「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」へと収斂する。これは靖國神社の歴史観と軌を一にする。 <詳報>

台頭する中国と香港雨傘運動 ― 區龍宇さん出版記念の講演会

【日 時】9月19日(土)13:30~17:00【資料代】500円
【場 所】四谷地域センター 多目的ホール

◆「台頭する中国」の社会闘争
アメリカに次ぐ大国となった中国の動向に注目が集まっています。腐敗一掃で権力基盤を確立したとされる習近平指導部が進める「新常態」(ニュー・ノーマル)政策は、グローバル資本主義大国への新たなステップであるとともに、周辺国との政治的、領土的摩擦を惹起しています。しかし中国の新たな外交戦略は内政の延長ともいえます。「台頭する中国」の貪欲なエンジンとしての官僚支配体制のもとで、労働者民衆がどのような抵抗を続けているのか。2014年夏に『台頭する中国 その強靭性と脆弱性』(柘植書房新社)を出版された區龍宇さんを招きお話を伺います。香港を拠点にグローバルな視点でオピニオンを発信してきた區龍宇さんは、今年4月2日付の朝日新聞でもインタビューで取り上げられるなど、その分析や主張に注目が集まっています。 続き(全文)

紹介『日本と中国、「近代化」の誘惑 アジア的なものを再考する』ーいながき

先日、梶谷懐さんという中国研究者の『日本と中国、「近代化」の誘惑 アジア的なものを再考する』という書籍を購入し、このMLの参加者など何人かの知人に、「なかなかいい本だとおもいます」と紹介しました。梶谷さんの論考はちょっと前から、いろいろと勉強になるので読んできました。最後まで読んで、結論から言うと、大変残念な内容でした。
簡単にいうとこの本は、中国でここ10年余り続いていた「新左派」と「自由主義派」の論争における、「自由主義派」の論点に立った中国論に、日本等の論客による中国論をまじえて、日中の関係性を論じたものでした。先日紹介した時は、第二章の途中くらいまで読んだところでした。安倍政権への批判、新左派的論説をもちあげた日本の論客に対する批判だったので、スッと落ちたのですが、若手の研究者ということで、自由主義派の立場にもそれなりの距離をもちつつ論評するのかな、と思ったらそうではなく、ほぼ全面的にそれに与するものでした。 続き(全文)

「日中労働組合交流史―60年の軌跡」(山田陽一著)を読んで―前川武志

 山田氏は総評・連合・国際労働財団・日中技能者交流センターと労働組合の真ん中で中国との交流にかかわった人である。その立場から、この文をまとめられた。
 残念ながら、日中労働者交流協会の文字は一回も出てこなかった。その点については、彼の視点の狭さを指摘するよりも、日中労交の先輩や現役の我々が資料の保存が出来ていないことや、活動のアピール不足によるところが多いと考える。

続き(全文)

『台頭する中国 その強靭性と脆弱性』出版

このたび、こんな本の出版をお手伝いしました。
装丁も値段も内容もハードになってます。ぜひお買い求めください。(IY)

著者:區龍宇/寄稿:白瑞雪、ピエール・ルッセ、ブルーノ・ジュタン
訳者:寺本勉、喜多幡佳秀、湯川順夫、早野一
出版:柘植書房新社
定価:4600円+税(ハードカバー、463ページ)
<目次>
序 ジグソーパズルの欠けたピース(區龍宇)
第1部 中国の台頭とそこに内在する矛盾
第2部 中国における労働者・農民の抵抗闘争
第3部 中国における新自由主義派と新左派
第4部 中国共産党の台湾・チベット・新疆ウイグル政策 <詳報>

中国で定着・蔓延するネオリベ雇用
―『変容する中国の労働法 「世界の工場」のワークルール』から

変容する中国の労働法先日、中国の雇用契約の実態について聞かることがありました。その際、中国では1年契約の雇用契約の反復更新がほとんど、と返事をしたのですが、もうすこし正確な情報を、と思って調べてみました。
 ※『変容する中国の労働法 「世界の工場」のワークルール』(山下昇 等編著/九州大学出版会/2010年1月/1000円)からの抜粋です。◎小見出し、[ ]、および※印は引用者が入れました。

◎ 94年「労働法」の公布と中国型終身雇用の終焉

「社会主義計画経済下[1953~78年]における中国の雇用システムは、固定工制度と呼ばれ、いったん企業に配置された労働者は、例外的な場合を除いて、その従業員としての身分を失うことはなかった。」(87頁)
 「改革開放政策[1979年~現在]による市場経済の導入に伴って、私営企業や外資企業が続々と増えてきた。そこで政府は、多様な個別労働関係を調整するために、1980年代から労働契約制度を導入し、1994年公布した『労働法』によりそれを立法化した。」(17頁)

 続き(全文)

書評『中国絶望工場の若者たち 「ポスト女工哀史」世代の夢と現実』
なぜ日本企業でストが多発するのか(中国人にとって耐えられない管理体制)を解剖

中国絶望工場の若者たち 『中国絶望工場の若者たち 「ポスト女工哀史」世代の夢と現実』は、日本ではあまり紹介されてこなかったストライキに立ち上がる第二世代出稼ぎ労働者を取材した本です。著者の福島香織さんは、元産経新聞の中国特派員。特派員のころからけっこう面白い記事を書いていたのですが、辞めてからは稼がないといけないのか、日本人受けするものが目立ってあんまり評価はしていませんでした。

 日本に出稼ぎにいったことのある知り合いの中国人の家族へのインタビュー。けっこう読みやすく、また中国人へのまなざしもいいと思いました。取材に出てくる中国人の研修先はそんなに待遇の悪くないところだったようですが、日本の研修制度の問題点などもちゃんと触れていて、表紙から想像する「なんとなく中国って危ない」というようなイメージとは違い、取材対象の中国人労働者を一人の人間として扱っています。女性の視点もある。
 おそらく日本人が書いたものとしてははじめて全編が出稼ぎ労働者で構成されているのではないか、と思います。取材期間が短かったことやつっこみ不足、あるいはすでに知っていることが大半など、いくつかの制限はありますが、中国人に接する彼女の対等な姿勢に好感が持てます。
  不安定な中国人出稼ぎ労働者の境遇を変えるチャンスは、家族主義的な日本的経営にあるかもしれない、という主張にはややげんなりしますが、なぜ日本企業でストが多発するのか(中国人にとって耐えられないほどの管理体制)など、日本企業の立場ではなく、中国人の立場に立って理解しようとしていました。
 表紙に使われている写真(幸福な社会を返せ、というスローガンを持っている労働者)は、あきらかに台湾の労働組合活動家の写真なんですが・・・。記者出身のせいか、読みやすい文体です。 Y・I

 『中国絶望工場の若者たち 「ポスト女工哀史」世代の夢と現実』公式サイト

 *参照 広州日中労働研究交流会で推薦する中国労働者の現状・運動を研究する参考文献