JCLIF レポート


 

中国・深センでディズニーグッズを製造する日系企業、水谷玩具での争議の続報(3)です。
 地方政府の担当者、会社側代理人Vulpine Consulting Services Ltdの担当者との交渉で一定の成果を勝ち取ったという続報(1月31日付)です。
原文はこちら
 会社側代理人のVulpine Consulting Services社のウェブサイトはこちら(http://www.vulpineconsulting.com/)ですが、なんとも怪しげな会社です。米系のプロのリスク管理の会社かな。
 今日2月2日には、結局三者合意に対して日本人経営者の確約がとれていないということで、春節(2月19日)にも帰郷せずにストライキ継続に備えたという報告があります。
 交渉に姿を見せない日本人出資者(水谷保彦氏)の責任が問われるところです。
 以下、1月31日時点の続報です。

続報:深セン水谷玩具工場労働者がかちとった成果 (2015年2月2日 )

2015-01-31 巻縮葉子錘子之声

 前回の報告から何日か経過したが、労働者たちは段階的な成果を勝ち取っている。ここ数日の間に発生した事態を報告する。
 1月28日は労働者らにとって「最も危険でしたが、最も価値のある一日となりました!」。この日の朝7時、労働者らが工場に来てみると、昨日よりも多くの警官が警備に当たり、迷彩服を着た兵士風の部隊が工場の外で訓練をしていた。守衛室の担当者も変っており、どうやら今晩にも物資を搬出しようとしているようだった。
 この状況を確認した労働者たちは二つのグループに分かれて対応に当たることにした。ひとつのグループは工場で引き続き物資の保護に当たった。その間にも工場の総務部門の人間が、通知を張り出した。通知は「三日間出勤しないものは怠業として処分する」というものだった。労働者はすぐに総務部を取り囲んで説明を求めたが、総務部長は財務室に逃げ込んでしまった。昼ごはんもこっそり出前を頼んで出てこようとしない。3時過ぎになってやっと出てきた。警察がずっとそばにいたが労働者の気勢に押されて増援を頼む始末だった。しばらくすると増援の警察車両が到着したが、労働者との間では衝突は発生しなかった。
 もうひとつのグループは、(深セン市)龍崗区政府に向かった。区政府は坪地労働センターに行くように労働者に説明した。労働者らは仕方なく坪地労働センターに向かったが、対応したセンター長は完全に経営の側に立って労働者に対応したことから、労働者らは再度、龍崗区政府にもどって入口で座り込んだ。4時間ほど座り込んだのち、区政府の担当者がやってきて翌日に工場に担当者を派遣して工場側との交渉を仲介することを約束した。
 1月29日、会社はやはり労働者と交渉することを拒否した。龍崗区政府の労働・人力資源社会保障局の副局長が約束通りやってきて労働者に状況を聞いた。そして口頭だが次のことを約束した。1)社会保険料は2年にさかのぼって追納させる、それ以上については司法手続きの問題になるが弁護士費用は免除する、2)住宅積立金は全額追納させる、3)カットされていた50%の割増賃金はすべて支払う。
 ただし労働者が最も関心を持っている雇用年数に応じた解雇補償金については、経営者と直接はなしてほしい、という。労働者は納得できないのでストライキを継続することにした。
 1月30日朝9時、政府の担当者が工場に入るのを確認。午後4時、政府部門の仲介で労使の交渉が行われる。出席者は、政府側の龍崗区人力資源社会保障局副局長、龍崗区労働監督主任、坪西村委員会主任、坪地労働センター長、会社側は交渉をVulpine Consulting Services Ltdという会社に委託しており、その担当者が交渉代表を務めた。三者の合意は以下の通り。
1、社会保険料は2年にさかのぼって追納、それ以上は法的手続きを活用し、政府は法的支援を行う
2、入社時点からの住宅積立金を追納する
3、カットされた50%の割増賃金を支払う
4、解雇補償金は前年度の平均賃金を基準に支払う。まず60%を支払い、20%は来月の賃金支給とともに支払う。残りの20%は退職時に清算して、雇用関係を解消する。
5、ストライキ期間(10日)の賃金を支給する
6、以上の約束を実施するまでは物資の搬出は行わず、労働者が交代で見張りをおこなうことについても業務として賃金を支払う。
7、事後弾圧を行わない。労働者代表に嫌がらせをしない。
8、労働者は2015年1月30日に正式に業務に復帰する。ただし2月1日までに会社が通知を張り出さない場合は、ストライキを継続する。

 会社の代理人は上記の条件を経営者に伝えたうえでサインと押印した通知を2015年2月1日に張り出すことに同意した。
 今回の争議では、龍崗区の関連部門がずっと企業に対する監督をおろそかにしてきたという問題がある。争議が発生してからも積極的に仲介しようとはせず、会社側の立場を擁護し、警察や民兵を動員し、労働者を負傷させる事態になった。しかし労働者の集団的行動の圧力(度重なる陳情や4時間にわたる座り込み)によって、労使の交渉の仲介に腰を上げざるを得なかった。
 争議の後半は政府の態度にも若干の変化がみられたことから、解決に向けての動きを加速させることになった。
 労使紛争は本来は労使双方による交渉で解決すべきであり、警察の暴力を持ち出すことはあってはならない。政府の職責は労働者を保護する法律を企業がちゃんと守っているかどうかを監督することにある。労働者が被害をこうむっているときには労働者に支援の手を差し伸べて労使交渉を促すのが当たり前である。それこそが、調和ある労使関係や調和ある社会の構築を可能にする。



 

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