JCLIF レポート

中国広州のシチズンの工場が突然閉鎖された、というニュースは日本のメディアでもたくさん報道されています。というのも中国でたくさん報道されているからです。つまり報道していいよ、というお墨付きを党が与えているからです。
 で、新華社系列のウェブニュースを訳してみました。かなりひどい報道です。つまり労働契約法にのっとって補償金さえちゃんと払えば問題ない、という内容です。これが「中国の特色ある社会主義法治」です。わかりやすい。日本企業も中国企業も、この「法治」で助かってます。
 ひどい記事ですが、最後に登場する教授がせめてもの良心でしょうか。
 さらに付け加えると、とある中国の研究者いわく、大量に失業者がでても治安弾圧でなんとかなるが、大量の労働者が職場生産拠点で団結されるのが一番怖い、と。なるほど、さすが共産党、ちゃんと勉強してますね。
 「貧困、抑圧、隷属、堕落、搾取の総量は増大する。しかしまた、絶えず膨張するところの、資本主義的生産過程そのものの機構によって訓練され結合され組織される労働者階級の反抗もまた増大する。資本独占は、それとともにまたそれのもとで開花したこの生産様式の桎梏となる。生産手段の集中と労働の社会化とは、それらの資本主義的な外皮とは調和しえなくなる一点に到達する。この外皮は粉砕される。資本主義的私的所有の弔鐘が鳴る。収奪者が収奪される。」(マルクス『資本論』)
 以下、新華社の報道。原文はこちら

突然の会社倒産で誰が労働者に責任を果たすべきか
シチズンセイミツ(広州)の突然の清算  
(2015年2月9日 )

新華社「中国網事」記者 陳冀 黄浩苑

広州市花都区新華街にある日系企業の西鉄城精密(広州)公司は2月5日に突如工場閉鎖を公表し、職員らに労働契約を解除することを通知した。工場で働く1000余名の労働者たちはまったく事情を知らされないまま、突如職を失うことになった。どうしていいかわからない労働者たちは工場の入口に集まって、納得のいく解決を要求している・・・。
この事件を取材するにつれ、次の疑問を禁じ得ない。会社は清算の手続きのために関係する行政部門に対して手続きを進めていたにもかかわらず、なぜ会社清算における最大の利害関係者である1000余名の労働者に何の通知もしてこなかったのだろうか。企業の撤退や清算というさまざまな市場リスクに対して、政府部門はどのような職責を負わなければならないのか。そして、突如の企業清算というやり方に対して、誰が労働者に責任を負わなければならないのか、という疑問である。

◎ 1000余名が突如「失業」した

西鉄城精密(広州)有限公司は、シチズングループが中国に設立した重要な生産拠点であり、2010年に登記され[シチズンセイミツのウェブサイトによると1997年より操業開始:訳注]、現在は1042名が働いていた。2月5日の午後1時過ぎ、会社が張り出した通知では、会社は清算し、すべての従業員との労働契約を即時終了すると書かれていた。
 労働者によると、5日の午前中は普通に勤務していたという。そして何の通知もないまま、午後2時半には職場から退去することを求められたという。職員に対して経営状況を隠ぺいし、突如会社を清算し、労働者の当然の権利は一顧だにしない会社の姿勢に対して、労働者たちは不満を強めている。
 この工場で働いていた陳さんによると、5日午前中は通常の勤務だったが、午後1時過ぎに突然通知を受けて、工場が閉鎖されてしまったという。「もし事前に通知を受けていれば、もう少し前から他の仕事を探すなりの心の準備などもできたのに。十数年も働いているベテランの工員もたくさんいるが、みんな補償問題がどうなるか不安に思っている。」
 突然の工場閉鎖について会社側は、シチズングループの日本本部が「構造改革」の世界的戦略として整理・調整を進めており、西鉄城精密(広州)の取締役会は、本部の決定にもとづいて会社の閉鎖を宣言したという。

◎ 手続きを進めていたことは従業員には秘密?

会社は清算の法的手続きは粛々と進めていた。しかし労働者の処遇に関する重大な変更を伴うこの事実を隠して進めてきたと疑われても仕方がない。
会社側は、もし事前に通知してしまうと、労働者の感情に影響が及び、正常な業務に支障をきたすと考えられたから、清算の当日に通知することを決めたという。
 広東広信君達弁護士事務所の孫俊傑・一級パートナーによると、企業の清算は労働契約の変更と解除をもたらすことは当然なので、「労働契約法」に従って、職員の利害に関する重大な事項については労働組合あるいは職員代表と協議を行わなければならず、20人以上の整理解雇の場合には一か月前に労働組合あるいは全職員に通知しなけばならない。つまり西鉄城公司は、会社清算の行政手続きだけでなく、労働組合あるいは全職員に対する説明をする法的責任がある。
 広州市花都区の党委員会、区政府によると、現在は労使双方が補償額を巡って協議しているという。区委員会、区政府は労働社会保障および税務など関係部門の担当者を工場に派遣して、法律アドバイス等を行う体制をとっている。担当部門の担当者は、労働法に定められた当然の補償を実施するように経営側に促し、かならず実施させるとしている。
 工場が示した最新の数字では、2月9日12時現在、すでに968人(全体の92.9%)が労働契約の終了に同意し、手続きを進めているという。残りの74人とは協議を継続している。

◎ 専門家「補償金を確保して労働者の権利を保障しなければならない」

今回の突然の解散にあたり、職員及び社会に及ぼす影響をできる限り低減させなければならない、というのが関係者の一致した見解である。そのなかでも最も重要なことは、社会保険料、時間外割増賃金などを含んだ解雇補償金を確実に支給し、支給明細および支給のタイムスケジュールを明確にすることだという。
 孫俊傑弁護士によると、労働契約法では、企業が正常ではない状況において労働契約を解除する場合には、労働者に対して経済的補償金を支払わなければならないと定めている。2008年以前は勤続年数1年につき1か月の賃金を基準に補償金が算出されたが、2008年以降[労働契約法施行]は勤続半年未満でも半月分の賃金を基準に算出されることになった。そうするとベテランの労働者の解雇補償金は十数万元にも達する計算になる。孫俊傑弁護士は「政府の関係部門は、会社が労働者に十分な補償金を支払うように督促するという職務を果たして、社会の安定を保障すべきである」と述べている。
 (広州の)中山大学の何高潮教授は、地方政府が早急に介入することのできる仕組みを構築すべきだと提言している。たとえば企業の水道光熱費、納税状況、賃金支給の状況などの情報を把握して、企業の営業が正常に行われているかどうかという状況を動態的に把握することで、事前に主体的に介入できる。そして清算や移転の動きを把握したら、すぐに企業と連絡を取りあい、雇用対策案を一緒に考え、その際には失業保険基金および公的な雇用ネットワークを提供することで労働者の再就職を支援し、労働者の切実な利益を保障すべきだと提言している。

 

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