JCLIF レポート


 

中国・深センでディズニーグッズを製造している日系企業、水谷玩具の争議の続報です。

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資産移転に抗議して深セン水谷玩具工場でストライキ (2015年2月1日 )

日本企業の水谷玩具(深セン)有限公司は、1997年に深セン市龍崗区坪地鎮坪西村吉祥路1巷10号に設立された。2014年上半期、1200人ほどが働いており、70%以上が女性である。

狡猾に法的リスクを回避して、労働者の権利を搾取
 この工場の投資者である水谷氏は、同じ工場敷地内で別会社「深セン市楽宝玩具製造有限公司」を登記している。工場建屋の半分は水谷工場、残りの半分は楽宝工場という具合である。労働者は同じ工場なのにどうして違った名前になっているのか、経営者は何を考えているのか、と疑問を呈している。

 この工場ではこれまで「5保険1基金」(養老、医療、失業、労災、育児保険および住宅積立基金)を自らすすんでは納付してこなかった。むしろ労働者に対してこれらの納付を自ら放棄する旨の誓約書にサインさせていた。この工場で15年働くある労働者によると、社会保険には加入してこなかったという。なぜなら賃金があまりに低すぎて生活もカツカツだったからだ。手取り賃金を増やすには残業に頼らざるを得なかった。この工場で5年働く別の労働者は、08年に入社したとき、社会保険の加入を放棄する書類にサインさせられたという。しかしその時はてっきり社会保険に加入するための書類だったと思ったから署名したが、翌年そうではなかったことがわかり、会社に対して強く要求したことでやっと社会保険に加入できたそうだ。いま工場全体では250名ほどしか社会保険に加入していないという。

 この工場の賃金は、時給かつ出来高払いで計算されている。繁忙期は毎日11時間もはたくが、労働者は先を争ってノルマ達成をしなければならない。休日は木曜日と日曜日。週末の100%割増賃金支払いを回避するために、木曜日に「アルバイト」と称して一定のノルマを与え、それが完成したらいくらかの報酬を支払っている。ノルマ達成のために、労働者は水曜日の夕飯を食べ終わってから、その「アルバイト」を夜の11時過ぎまでこなし、休日である翌日もその仕事を続けてノルマを終わらせる。この「アルバイト」のノルマ達成には15時間ほどかかるが、割増率はわずか1.5倍しかない。50%分の割増賃金がカットされている計算になる。

賃金は最低水準で離職を余儀なくされる
 工場では2014年4月から計画的に設備機器を移送しているが、これまで労働者には何の説明もない。すでに50%ちかくの設備が搬出されており、受注も基本的にはフィリピン工場に移っており、深セン工場の労働者の賃金は大幅に減少した。2014年11月から、残業は完全になくなり、労働者は深センの法定最低賃金水準の1808元しか受け取れない状態であり、各種社会保険の納付(および生活費)を考えればほとんど手元に残らない。雇用年数の短いものはどんどんやめており、この半年で大半の労働者が工場を去った。労働者はいまでは400人余りにまで減少している。彼女らの雇用年数は5~17年になる。
 2014年10月11日、労働者は会社に対して設備の移転についての説明を求めるとともに、(収入確保のための)残業を要求した。しかし会社は無視した。1月15日、労働者たちは工場所在地の坪西村民委員会に対して申し入れを行った。村民委員会の仲介で、労使が協議を行ったが、経営者はなんら誠意を見せなかったことから翌16日からストライキで権利を主張せざるを得なくなった。工場設備が一方的に搬送されないよう、労働者たちは交替で工場の三つの出入り口を24時間監視し、選挙で27人の労働者代表を選出した。
 労働者らは政府の各部門に対して仲介するよう求めてきた。しかし一部の部門は労働者と反対の立場に立って、いつでも労働者を逮捕することができると恫喝した。

1月26日、交渉は決裂し、工場は一方的に通知を張り出した。

(会社の通知の画像:翻訳は省略)

この会社の通知に対して、労働者側は逐一、返答した。
(以下、労働者側の返答)

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1月26日に会社が一方的に張り出した通知に対して、私たちは以下のように回答します。

1、「当社は工場にある設備をフィリピンに搬出しないことを保証します」とありますが、実際にはすでに2014年4月から搬出は行われています。そしてこれまで全く労働者に対して説明はありませんでした。現在すでに設備の50%近くが搬出されており、受注も基本的にはフィリピンに移っており、私たちの収入は大幅に減少し、基本的な生活さえもままならない状態です。これまで何度かの交渉でも会社側は搬出の事実を認めようとせず、解雇補償手当の問題についても一切の明言を避けてきました。このような状況においても、まだ会社が「保証します」ということを無邪気に信じろと言うのでしょうか?
2、「当社は経営の継続を保証します」についても、上記と同じです。
3、「ストライキ期間中も通常の勤務時間として計算して賃金を支払う」ことは、私たちの要求のなかでも欠くべからざることです。
4、「2015年の賃金、福利厚生の水準を2014年以下にしないよう保証する」といいますが、設備も搬出され、受注もないのに、何を根拠に保証するのですか!
5、「カットしてきた50%の割増賃金を補てんする」については、2月1日までに現金で支払ってください。
6、「社会保険の追納は法律に従って手続きを行う」という言葉通りに実施されることを希望します。
7、「住宅積立金と休暇などの争議案件は工員自ら労働仲裁を申請し、当社は仲裁の結果を実行する」とありますが、積立金と休暇の問題は法的に保障された労働者の権利にまつわることなので、会社は主体的に私たちの要求を受け入れて解決すべきであり、私たちが申請しなければならない理由はありません。
8、水谷公司から楽宝公司への移籍における雇用年数の問題については、どちらの出資者も水谷氏なのですから、雇用年数も当然合算するという会社の回答は当然です。

 以上、会社側が労働者の要求を誠実に受け止めず、「移転はしない」「経営は続ける」「福利厚生は保証する」などの口約束だけで労働者をだまそうとしていることへの返答です。
 「労働契約法」第4条では「使用者は、労働者の密接な利益に直接関わる規則制度及び重要事項決定を、公示するか又は労働者に告知しなければならない。」と定められています。同38条では「(2)期限どおりに労働報酬を満額支給しない場合、(3)法により労働者のために社会保険料を納付しない場合」は労働者は労働契約を解除できる、と定められています。同46条では、「次の状況のいずれかがある場合、使用者は労働者に経済補償を支給しなければならない。(1)労働者が本法第三十八条の規定により労働契約を解除した場合」と定められています。

 会社側は十分な割増賃金を支給せず、社会保険への加入や住宅積立を行ってこなかったことから、労働契約を解除する権利があり、会社は同法に従って解雇補償金を支払わなければなりません。会社による違法行為が先に存在していたのですから、会社は労働者側の正統な要求を受け止め、交渉における誠意を見せる必要があります。「三日間の怠業で、会社の規定により解雇する」という脅し文句を持ち出してはならないのです。たとえそれで解雇されたとしても、会社には法律に従って倍の解雇補償金を支払う義務があるのです。

水谷/楽宝玩具公司の全工員
2015年1月27日

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 1月26日に交渉が決裂し、政府は27日の早朝から大量の迷彩服の人間を工場の外で待機させ、労働者の排除を試みようとし、守警室では女性労働者と争いになって、労働者が負傷した。
 1月28日の今日、警備員は全員が入れ替えとなり、正体不明の男性が守警室から労働者を監視しています。労働者は区政府に対して仲介を求めるしかありません。
 正当な権利をもとめる労働者の行動はまだ終わっていません。社会各界の注目を呼びかけます。

錘子之声より


 

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