JCLIF レポート

2月20日、明治大学のリバーティ教室で中国労働関係学院 講師の王侃(おう・かん)さん(写真上)の「中国における労働問題の現在ー官製労働組合と労働NGOの動向を中心に」と題した講演会が開かれ、、石井知章さん(明治大学)が司会を務め約50名が参加した。
 今や世界第2の工業国に発展した中国はストライキをはじめとした労働争議が多発している。その背後に官制労働組合である工会(総工会)とは違った労働NGOの存在が注目されている。王さんは中国におけるその研究の第1人者である。

王侃さんの講演会:重要度を高める中国の労動NGOを解説 (2015年2月20日 )

「最近の10年間における中国におけるストライキや労働者の動員は、労働NGOと密接な関係を持っている」、「中国の法律では、労働者の結社の自由が厳しく制限されており、労働者は国公認の労働組合(総工会)にしか加入できない」。しかし、総工会は党に従属しており、役員も党が任命し、大方会社幹部で占められ、労働者の自主的な要求や運営が許されていない。
 王さんは2006年から2015年にかけて全国100の労働NGOを調査した結果をもとに報告。労働NGO100の内81が労働者が設立したもので、95が国際NGOが関係し、国際性が強い。NGOの登場の背景に大工業が発展と出稼ぎ労働者の集中し、労働者意識を発展したことを挙げる。争議の際にもっとも役立ったものは労働者仲間という答えが2006年に19%から2013年には66%に上昇している。一方、労働組合(工会)の存在する会社での組合への信頼度を調べると、信頼するが25%、存在を知らないという答えが47%であった。
 労働NGOが最初に登場したのは1995年北京で開かれた国連世界女性会議後であった。香港の労働NGOやアメリカの財団が中国の労働NGOを支援した。政府は当初歓迎し、僻地の貧困扶助で政府への協力を期待していた。労働NGOにとって最も重視されているのが政府との関係である。政府の態度は「自由放任から、管理とコントロールの強化、さらに『体制内化』へ」変化している。政府は「NGOの独立性と国際性を弱め、国家体制のレールに引き入れる」ことを目指している。
 労働NGOには「融合型」、「対抗型」、「無視型」、「傍観型」の4類型みられるが、最も多いのが「対抗型」で水面下で労働者のネットワークを構築しており、雇用主と政府のいずれに対しても非協力的である。今後の趨勢については、NGO同士の連携の強化、闘争性と協力性の併用、動員基盤の強化、労働組合と政府の改革を通じて労働組合選挙や集団交渉への参加や、出稼ぎ労働者の組織化を図っている、と報告を締めくくった。

鈴木賢さん

続いて鈴木賢さん(北海道大学教授 写真上)が王さんの報告の背景となる資本主義国のわが国と根本的に異なる中国の政治社会の構造を説明した。引き続き、質疑討論に移りたくさんの質問が出たが、王さんはにてきぱきと要点を漏らさずに回答した。残念ながら質疑の内容は省略する。最後に司会の石井さんからめったに聞けない大変貴重な話を聞けて良かったと王さんへ賛辞を送った。

 報告:高幣真公(写真も)

 

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