JCLIF レポート

こんにちは。会員のIYです。

台湾の労働17団体がサービス貿易協定反対の声明を発表し、蘋果日報(台湾版)のウェブサイトに掲載されていましたので、訳してみました。主要には、サービス貿易協定賛成の立場から議場占拠の早期収拾を訴えた労働団体などへの反論で、同労働団体の反米主張への反論も含まれていることからすこしわかりづらいですが。

蘋果日報(台湾版)の記事と声明の原文はここです。

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労働団体がサービス貿易協定反対の声明 ー 戦線は5月1日のメーデまで続く
蘋果日報 台湾版 2014年4月5日

団結工聯、多くの県市産業総工会、全国閉鎖工場労働者連線、全国教師労組総連合会など17の労組と労働団体が今日発表した共同声明は中台サービス貿易協定に反対し、貿易の衣をまとってはいるが、実際にはサービス貿易の自由輸出という核心があり、サービス貿易協定を通じて、競争力のある中国資本が台湾でサービス拠点を展開することを可能にすることで、すでに過剰供給状態にあるサービス市場への新規参入によって、地元企業の値下げ競争の消耗戦を引き起こし、この競争のなかで労働者にはさらなる犠牲が押し付けられることになる。

これらの労働団体は、政府にとって台湾人口の半分にあたる労働者の生計問題は、台湾企業が中国市場で稼ぐ利益に比べたら重要な問題ではないかのようで、労働者を犠牲にして企業が利益を上げる自由貿易に対しては、労働団体は厳正に反対すると述べた。2009年の金融危機による失業の嵐以来、毎年台湾のすべての労働組合団体はこの日に街頭に繰り出し、労働者の要求を政府に突き付けている。労働団体は、今年のメーデではこのテーマを取り上げ、自由貿易と新自由主義政策に対する批判し、労働者の権利を守るとしている。

 以下は声明の全文である。

「サービス貿易反対、自由貿易反対」を支持する労働組合および労働団体の共同声明

5月1日のメーデまで一か月を切った。2009年の金融危機による失業の嵐以来、台湾の労働組合団体は毎年この日に街頭に繰り出し、政府に対して労働者の訴えを突き付けてきた。今年も労働者に大いに関係のある政策がいま話題になっている。「両岸サービス貿易協定」である。3月26日に一部の労働団体や労組委員長が経済部[日本の経済産業省にあたる]の前で「立法院の無秩序状態を早急に収束させ、早期にサービス貿易協定を締結せよ」と訴えたが[訳注1]、われわれは自由貿易反対するという立場にたち、台湾の代議制政治に対する批判的立場から、次の三つの観点を提起するものである。

一、「トリクルダウン効果」のデタラメ:自由貿易が労働者階級の生活向上をもたらすかもしれないという主張に反対する

 「トリクルダウン効果」をもちだして自由貿易とサービス貿易を美化する主張がある。前述の一部の労組委員長らの声明は次のように述べている。「馬英九は当初提起した『トリクルダウン効果』とは、上部に水が溜まれば自然と下の労働者に滴り落ちるというものだが、[馬総統就任後の]この五年来、その効果は限定的であったが、これこそがわれわれ労働者が十数年来直面してきた最大の問題なのである。」 

 われわれはグローバルな貿易協定がもたらした主要な結果は、資本移動の加速であり、大資本家利潤の巨大化であり、雇用者は利潤を底辺労働者と分かち合うことはなかったと考える。いわゆる「自由貿易は雇用機会の増加や労働条件の引き上げに効果がある」という主張は、権力エリート階級が共同で労働者を騙すためのデマに過ぎない。

 主計処の統計によると、2011年に台湾でもっとも豊かな5%ともっとも貧しい5%の貧富の格差は96倍に達している。過去10年の台湾全体の実質賃金は3.4%下落している。製造業では0.38%下落だが、サービス業では5.86%も下落している。台湾の経済成長によっても労働者の所得は減少している。労働運動に取り組む台湾の労働団体はこの「トリクルダウン効果」という主張に対して、再び労働者を騙すデマであることをはっきりと認識しなければならない。

二、サービス貿易反対は労働者階級が自由貿易を監督する一環である

 「サービス貿易協定」への反対は、自由貿易に反対する労働運動の一環としなければならない。近年の台湾労働運動において、WTO、アメリカ牛、アメリカ豚、自由経済モデル区などの自由化政策への抵抗において、台湾社会は長年の間アメリカ帝国主義の思想的植民地下にあり、アメリカの覇権に対する省察や警戒心に欠けていたとしても、それを以てサービス貿易協定が台湾人民へもたらす影響への検討を回避する理由にしてはならない。逆に、もしアメリカの覇権に反対する台湾社会の力の弱さを理由にして、サービス貿易協定が労働者にもたらす影響の検討を回避するのであれば、台湾社会がさらに貿易の自由化というイデオロギーを主流化させることになるだろう。

 まさに自由貿易に対する台湾社会の批判の欠如ゆえに、労働団体は今回の学生運動が注目を集めているという契機を逃さず、われわれの階級的意識と自由貿易反対、帝国主義反対に関する教育活動を強化すべきなのである。

三、無秩序なのは学生運動ではなく、代議制政治と民主主義憲政のほうである

台湾立法院のそれまでの議事運営のありかた労働運動が抗議する対象である。一部の人間は上記の声明のなかで学生による立法院占拠状態を「無秩序」と形容している。しかし我々は、次の点を強調しなければならない。台湾立法院の議事運営のありかたは、大企業によって養われた圧倒的多数の立法委員[国会議員]が、人民の財産をはく奪する各種毒素が含まれたテロリズム的法案を通過させ、その立法過程も慌ただしいものであり、人民の権利の無視は言語道断である。それゆえ今回の立法院占拠の行動は、現行の政治経済構造がもたらした代議制政治の長期的活力の喪失への内省という歴史的意義をもっているのである。サービス貿易協定や自由経済モデル区条例などの重大な政策に対して、労働団体においても、立法委員らの審議は民主的手続きに符合しているのか?あるいはこれを機会に、人民の政治参加メカニズムに対するさらなる検討と内省をしなければならないのではないか?と考えなければならない。

「両岸サービス貿易協定」は、貿易の衣をまとってはいるが、実際にはサービス貿易の自由輸出というのが核心である。サービス貿易協定を通じて、競争力のある中国資本が台湾でサービス拠点を展開し営業することが可能になる。すでに過剰供給状態にあるサービス市場への新規参入によって、地元企業の値下げ競争の消耗戦を引き起こし、この競争のなかで労働者にはさらなる犠牲が押し付けられることになる。政府にとって台湾人口の半分にあたる労働者の生計問題は、台湾企業が中国市場で稼ぐ利益に比べたら重要な問題ではないかのようで、労働者を犠牲にして企業が利益を上げる自由貿易に対しては、労働団体は厳正に反対する。

「両岸サービス貿易協定」はすでに与野党の誘導によって反中国か否かの対立にされてしまっているが、本当の争点は反中国か否かではなく、人民の生活問題にあるとわれわれは考える。今日の労使関係は完全にバランスを欠いており、国家の経済発展と労働者の実質賃金がまったくリンクしていない状況において、資本の立場に立つすべての自由貿易政策は、さらに労働者に危害を加えるだけである。われわれは労働者の立場にたち、強欲限りない資本の赤裸々な陰謀に反対すると同時に、資本と共謀する資本家政府と団体にも反対する。今年五月一日のメーデの活動において、労働団体はこのテーマを掲げて、現在の自由貿易と新自由主義政策に対して批判を行い、労働者の権利を防衛することを訴えるものである!

共同声明(17団体)

・団結工聯(全国自主労工聯盟、台北市産業総工會、宜蘭県産業総工会、桃園県産業総工会、新竹県産業総工会、苗栗県産業総工会、台南市産業総工会、新高市産業総工会、中華電信労働組合、台湾プラスチック関連企業労働組合連合会)
・大高雄総工会
・高雄市産業総工会
・高雄市職業総工会
・高雄市石化業産業総工会
・全国教師労働組合総連合会
・全国閉鎖工場労働者連線
・人民火大行動聯盟

<訳注1>
3月25日に発表された声明「立法院の無秩序状態を早急に収束させ、早期にサービス貿易協定を締結せよ」は、台湾労働党のウェブサイトに写真と共に掲載されている。

署名したのは労働人権協会1団体および台北市総工会、新北市総工会、台北市撮影業職業労働組合、台北市木工職業労働組合、台北市菓子職業労働組合、台北市焼菓子業職業労働組合の各委員長、台灣煙草酒株式会社労働組合連合会、全国金融業労働組合聯合総会、全国労工聯合総工会の各会長、全国労働者福利促進協会の理事長、労働組合大聯盟準備委員会の呼びかけ人の合計11個人。

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