JCLIF レポート

こんにちは。会員のIYです。
 学生団体との対話で現状打開を狙う香港政府ですが、トップの行政長官がNT紙のインタビューに対して、普通選挙を実施すると低所得者層に配慮しないとけなくなる、というイチジクの葉っぱさえも自ら捨て去る発言をしたことで、香港の社会運動団体は反発を強めています。
 22日には、抗議のデモが行われました。
 以下は、デモを呼びかけた団体およびそれに賛同した社会運動団体の連名の抗議文の翻訳です。

香港の貧富の格差や貧困問題に触れつつ、行政長官の発言は中国政府の姿勢とも無縁ではないことを明らかにしています。中国政府は、香港返還以前から現在まで、香港の庶民ではなく、大資本家の支持を取り付けることを政策の中心に据えてきました。それがなぜか賞賛されることの多い「一国二制度」の本質です。

22日デモの画像はこちら。
  原文はこちらから。

これは1%vs99%の運動だ
低所得者層を踏みにじる梁振英への回答

2014年8月31日、中国全人代常務委員会は、70万の香港市民のネットを通じた市民投票で表明した行政長官選挙における市民派候補が立候補できる案の実現要求を無視して、2017年の行政長官選挙と2016年の立法議会選挙の実施方法を決定した。学生たちは9月22日に授業ボイコットを決行し、現在もなお続いている全市民規模の民主化運動を引き起こした。この運動は、政治制度の民主化という明確な要求がある。21世紀の世界でもっとも経済が発達した地域の一つである香港において、その政治制度は19世紀の資本主義の状態のままにとどめ置かれているのである。立法会[香港議会]の職能別選挙区と行政長官選挙委員会の設置は、大資本や富豪の既得権をあからさまに保障・強化する
ものであり、それによって香港は世界でも最も貧富の格差のひどい地区の一つになっている。

 2014年の「フォーブス」誌の世界長者番付(※)では、香港の大富豪数はこれまでで史上最高となり、ランキング入りした45人の富豪が所有する資産は2140億ドルに達した。それは2013年の香港のGDPの80%にも達するもので、その割合は世界第二位となっている。「フォーブス」のレポートは、香港では130万人が貧困ライン以下で生活する一方で、もっとも豊かな1%の人口はますます富んでいることを伝えている。

※訳注:10億ドル以上の個人資産を持つ富豪を集計し、世界1645人のうち、香港人は45人で8位。上位7位はアメリカ492人、中国152人、ロシア111人、ドイツ85人、ブラジル65人、インド56人、イギリス47人。

 女性、青年、高齢者が貧困問題で影響を受ける主要な集団である。2013年の政府統計では、就業人口の50%が1万4100香港ドル[約19万5千円]以下の月収となっている。この低賃金と貧困問題は青年たちの問題でもある。15歳から24歳の労働人口の50%が1万香港ドル以下の月収に苦しんでいる。このような状況を改善するために社会運動はこれまでも最低賃金制度、労働時間規制、皆年金制度、住宅と教育の脱商品化の実施などに取り組んできたが、いずれも政府から有効な回答を得ることができていない。立法会においても、普通選挙枠で選ばれた議員らが関連法案を提出しても、産業界の利益代弁者の多い職能別選挙枠で選ばれた議員らによって否決されてきた。香港の庶民、特に青年世代にとっては未来を展望することができなくなっている。市民派の立候補の枠組みの制定と職能別選挙区の廃止を求める今回の雨傘運動は、こうした状況のなかで発生した。アメリカの青年たちがウォール街を占拠した時のスローガンを拝借すれば、これは1%vs99%の運動と言える。1%の富豪は不合理で非文明的な政治制度を通じて、我々の財産と利益を盗み取ったのであり、学生と市民は、99%の市民の権益を取り戻すために、オキュパイ行動を通じて支配集団に厳正な抗議を突きつけたのである。

 民衆による街頭オキュパイ行動はすでに3週間目に入っている。特区行政長官である梁振英は、学生と市民によるほんのわずかの要求にも正面から応えなかっただけでなく、「ニューヨークタイムズ」のインタビューでは、香港市民の尊厳を踏みにじり、香港で民主的制度を実施しないのは、平等な選挙権を低所得者層に与えることを防ぐためであることを暗示する発言した。彼は、もし市民立候補の実施あるいは候補者指名委員の普通選挙が行われた場合、行政長官は市民の半数にあたる月収1万4000香港ドル以下の人日のために主張し、政策もそちらの側に偏らざるを得ない、と語った。別な言い方をすれば、今日の特区政府および彼自身は、低所得者層の声と利益をおろそかにしているということである。
われわれ香港の大部分の市民と青年の所得はかなり低い。それは現在の非民主的な政治経済制度の結果であるにも関わらず、梁振英はそのわれわれに対してレッテルを貼って排斥しようとしている。意図的にわれわれの政治権力をはく奪しようというのだ。これは庶民への関心という皮をかぶった狼が、あらためてその尻尾を露出したにすぎない。

 梁振英の発言は、8月31日の全人代決定以降に伝えられた北京官僚や学者連中の発言と相通ずるものがある。8月22日の全人代常務委員会の李飛・事務局次長の発言では、産業界が候補者指名委員会において尊重されているのは香港の資本主義を体現しているからだと述べた。8月28日には清華大学法学院の王振民院長が、香港の産業界および資本家は香港経済の8割の命脈を握っているが、普通選挙が実施されてしまえば少数派となるので、候補者指名委員会の制度設計ではビジネス業界の利益を保証する必要があると述べた。香港学生連合会が授業ボイコットを始めた当日、習近平国家主席は、北京で香港の富豪らの訪問団と面会した。これらの思考は、国際人権規約などが賦与するところの誰もが基本的人権や経済・社会権を有するという原則に完全に背くものである。

 われわれは、真の普通選挙が少数の大資本への富の集中を打破し、ますます悪化する政官財の癒着と腐敗現象の万円を回避することができると願っている。梁振英らの、普通選挙は福祉国家主義をもたらすという主張には全く根拠がない。現代世界の政治経済体系において、圧倒的多数の資本主義の国家・地域では、平等な選挙権、被選挙権による選挙が普及している。しかしこれら民主主義国家では、米英の自由主義モデル、北欧の社会民主主義モデル、西欧の社会統合モデルなど、いくつもの政策モデルが存在している。そしてこれらの民主化された資本主義国家においては、異なる程度での貧富の格差や大資本独占の問題が存在している。しかし今日の香港は、世界でもっとも自由な経済システムと言われているが、民主的な政治体制によるバランスがとられてはおらず、利益は資本の側に偏っており、社会矛盾は激化している。街頭における抵抗は権力無きものの最後の選択となっている。

 われわれ女性、労働者、庶民、学生の団体は、今回の運動において理念を堅持し、共に闘う。われわれは梁振英の粗暴な言行に対して強く非難するとともに、以下要求する。

1)梁振英は月収1万4000元以下の市民に対するべっしてきな発言を謝罪し、オキュパイ運動以来の失政の責任を取って辞任すること。
2)特区政府は、行政長官の立候補と職能別選挙区廃止という市民の要求に対して回答し、それを実現するための案を提示すること。
3)特区政府は、民生を保障し、貧富の格差を改善するために、皆年金制度、最賃制度、労働時間規制を制度化し、団体交渉権を復活させ、教育・公営住宅・医療・交通など公共サービスの商品化と民営化を中止しすること。

発起団体

支援学界全民抗命聯合陣線
大專政改関注組

賛同団体

街坊工友服務処
香港職工會聯盟
香港婦女労工協会
同根社
工党
青年重奪未來
社会民主連線
香港天主教正義和平委員会
新婦女協進会
左翼21
労資関係協進会
保衛香港自由聯盟
天水圍社區發展網絡
緑長青環保協進会
関注綜援低收入聯盟
関注学童発展権利聯席
争取低收入保障聯席
特殊学習需要(SEN)権益会
社區発展陣線
関注基層住屋権児童照顧者聯席
関注零散工権益聯席
香港社会経済聯盟
土地正義聯盟
社工学聯
正言匯社
残疾人士監察特首施政大聯盟
香港専上学生聯会
香港浸会大学教職員工会
(増加中)

2014年10月22日


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