歴史を銘記し、未来に目を向け、友好交流を促進しよう――「日中友好労働者シンポジウム」(8/27~8/30)参加の報告

 日中平和友好条約締結40周年「日中友好労働者シンポジウム」

日中平和友好条約締結40周年を記念して、8月28日北京で「日中友好労働者シンポジウム」が中国職工対外交流センター(以下「対外交流センター」)並びに日中労働者交流協会(以下「日中労交」)の共催で開かれました。日本から日中労交の15名の訪中団が、8月27日から31日まで北京を訪問し、シンポジウムに参加するとともに、人民網(人民日報のインターネット版)、京東グループ(無人コンビニなど)の職場見学、さらに抗日戦争記念館、故宮、中国国家博物館、藍色港湾(ショッピングモール)の見学をし、中国の歴史、中国の発展する姿を知ることができました。

訪中団は、団長=伊藤彰信(日中労交会長、全港湾顧問)、副団長=広岡法浄(三重一般労働組合書記長)、秘書長=千葉雄也(労運研事務局員)、団員=平安隆雄(国立木更津工業高等専門学校名誉教授)、保田泉(地域労組愛知ユニオン委員長)、門永三枝子(神戸ワーカーズユニオン組合員)、前田純一(さかいユニオン執行委員)、春川広司(おきたまユニオン書記次長)、甄凱(岐阜一般労働組合第二外国人支部支部長)、川中厚(中国残留日本人孤児を支援する兵庫の会会員)、岡崎彩子(憲法を生かす会・ひょうごネット会員)、大城航(沖縄県高教組那覇支部書記)、水摩雪絵(葛飾区議会議員)、木村匠吾(自治労山形県本部執行委員)、野島聡子(全国保険医団体連合会事務局員)の15名です。

私から概括的な報告を行い、各参加者から感想をこのホームページに掲載するようにします。

 困難な歴史を克服して、惑わない段階(対外交流センター・彭勇秘書長)

北京に到着した27日、中華全国総工会のビルにある対外交流センターを表敬訪問しました。対外交流センターの彭勇秘書長は「日中労交が設立された1974年は、文化大革命の時期で中華全国総工会は機能していませんでした。その時の窓口は中日友好協会でした。1978年に中華全国総工会第9回大会が開かれ、活動が復活し、日中労交との交流が始まりました。その時から40年になります。今年は改革開放から40年、日中平和友好条約締結から40年です。孔子の言葉に『四十にして惑わず』という言葉がありますが、私たちも様々な困難な歴史を克服して、惑わない段階に至っています」と歓迎のあいさつを述べました。

伊藤団長は「シンポジウムを共催出来て嬉しく思っています。日中平和友好条約締結40年を迎え李克強首相が述べたように日中関係の新段階が切り拓かれようとしています。しかし、安倍首相は、日中友好を述べながら、国内では中国脅威論を宣伝しています。安倍の中国脅威論をどう克服するか、安倍の口先だけの労働政策をどう批判するかが私たちの課題です。沖縄の翁長知事は、米朝会談によって朝鮮半島の緊張緩和、朝鮮半島の非核化がすすむなか、辺野古に基地をつくる意味はないと述べました。シンポジウムが、日本国民の意識を変えるきっかけになり、新しい時代の日中労働者間の友好交流を築くことになることでしょう」とあいさつしました。

彭勇秘書長は日中関係について「『遠い親戚より近くの隣人』とよく言いますが、中日両国は隣国ですからお互い仲良くしなければなりません。中日両国関係はほとんどが友好の歴史です。しかし、日本は明治維新によって軍国主義となり、1894年に日清戦争を起こし、1931年には中国を侵略しました。侵略戦争は中国に多大な侵害をもたらしただけでなく、日本国民にも侵害をもたらしました。戦争で死亡した中国人は3500万人です。先輩たちは『和すれば益する。戦えば互いに損する』と認識し、1972年に国交正常化、1978年に平和友好条約を結びました。日中労交の市川誠初代会長は南京に日中不再戦の誓いの碑を建てました。労働者の立場から中日友好を考えることは明日のシンポジウムの趣旨でもあります。労働者の立場から戦争をどのように止められるか、日中友好をどのように続けられるか、我々が考えなければならない課題です」と述べました。

中華全国総工会について「唯一のナショナルセンターであり、1925年広州で結成されました。31の省レベルの労働組合、10の産業別労働組合があります。昨年までの組合員数は3億2000万人です。共産党の指導の下で活動しています。労働者の権益を守ること、労働者の声を代弁することは日本の労働組合と同じです」と説明しました。

また、現在の取り組みについて「①経済社会発展の変化に応じて新しい就業形態で働く人が増えているが、その組織化に取り組んでいること。②労働者の権益を守るレベルを高めて、調和的な労働関係の構築に力を入れ、労働模範精神、職人精神の発揚に努力していること。③労働組合の改革を行い、娯楽化、貴族化、行政化、官庁化を取り除くこと。行政のように指示、命令を出せば良いというやり方を改めること。官庁のように9時出勤5時退勤ではなく、労働者の中に入ること。貴族のように振舞うのではなく、一般の労働者を労働組合の役員に入れること。労働組合はスポーツ、文化活動に重点を置くのではなく、労働者の権益を守る活動を重視すること。④インターネットを利用して若い人にサービスを提供すること。⑤今年の10月に中華全国総工会第17回全国代表大会を開催し、5年間の活動目標の決定、規約の改正、指導部の選出を行うこと」の5点について説明がありました。中華全国総工会が末端組織の活性化に力を入れていることが分かりました。

「歴史を銘記し、未来に目を向け、友好交流を促進しよう」

 28日は終日、シンポジウムでした。シンポジウムのスローガンは「歴史を銘記し、未来に目を向け、友好交流を促進しよう」です。

開会式では、中華全国総工会の江広平副主席、日中労交の伊藤会長があいさつしました。シンポジウムは、①中日民間交流の歴史、②中日労働組合の重要な活動、③新時代における中日両国労働者の交流と協力の強化の3つのテーマについて、日本側、中国側から合計13名が報告を行いました。それぞれ現在の取り組みを具体的に報告し合いました。制度の違いから理解できない面もありましたが、まず、現実を知ることから理解し合うという出発点になったと思います。

シンポジウムは、伊藤会長と彭勇秘書長が総括発言をして終わりました。彭勇秘書長は次の3点を強調し、シンポジウムの成功を讃えました。①実情にもとづいた議論を行い、対外交流センターと日中労交の協力が深まった。②日本各地から様々な職種の方が参加し、中国側も中華全国総工会の各部署、関係産別工会、中国国際交流協会、中国労働関係学院、中国科学技術交流センターなどから参加があり、支援協力が広まった。③テーマに即した真摯な議論を行い、深い印象を与えることができた。

なお、シンポジウムの発言をまとめた報告書をつくることにしていますので、詳しい内容は報告書を参照してください。

 中国人民抗日戦争記念館

 29日は午前中、中国人民抗日戦争記念館を見学しました。説明員が「日本軍の蛮行、虐殺について知っているか。日本ではどう教えているのか」と問いかけてきたことが印象に残りました。中国の日中戦争に関する展示館では、必ず最後に日中友好の展示があるのですが、そこにも日本の歴史教科書の展示があり、歴史の歪曲に対する批判が強烈でした。シンポジウムで沖縄の大城さんが琉球と沖縄の歴史、琉球と日本の歴史を振り返りながら沖縄の基地問題の報告をしましたが、オール沖縄の原点が教科書問題であったことを思い出し、中曽根首相の教科書改悪を批判しきれなかったことが本土での運動の弱さにつながっているのではないか考えさせられました。友好交流を進めるうえで歴史認識は重要な問題です。

 日中友好の懸け橋として情報発信―人民網を見学

 29日の午後、人民網の職場見学をしました。人民網は中国共産党の機関紙「人民日報」のインターネット版です。1997年に開設され、翌年から日本語の発信を始め、PC版だけでなくSNSでも発信しています。日本チャンネル版もあって日本の情報を中国語で発信しています。現在9言語に対応し、11か国に支社があります。スタッフは2600人、日本語スタッフは18人(うち東京に5人)です。

海外伝播部の劉慧部長、同部日本語版の王暁霞編集長とスタッフが対応してくださいました。「人民の意見を地方政治に役立てる掲示板も行っている。日本の新聞社やシンクタンクと提携してニュースソースを取っている。日中友好の懸け橋として情報発信をしていきたい。これからは人民網の独自取材で中国の伝統文化の紹介を含めて動画ニュースに力を入れていきたい」と語っていました。

伊藤団長からは、人民網のニュースを月2回、労働問題、社会問題のニュースを20本ピックアップしてホームページに掲載していること、読者は、強制連行問題、従軍慰安婦問題などとともに、中国人の働き方・暮らしぶりにも関心があることなどを話しました。
「なぜ若い女性スタッフが多いのか」と聞いてみると、外国語学部の8~9割が女性だということです。「なぜ日本語を勉強したいと思ったか」と聞くと「日本のアニメが好きだから」という答えが返ってきました。文化交流の重要性を感じました。

 通販ネット・物流会社の京東グループの本社

もう一つの職場見学として、30日午後、北京の南西部の北京経済技術開発区にある通販ネット・物流会社の京東グループの本社を訪問しました。京東グループ17万人の従業員を抱える大企業で、アリババに次ぐ売り上げを誇っています。本社ビルには、従業員を対象にした無人コンビニ、キャッシュレス店舗、商品注文所、商品引渡所、宅配ロッカーなどの実験店舗がそろっていました。注文を受けてから、生鮮食品は1時間以内の配達をめざして、スーパーやレストランと提携し、3輪電動バイクの配達員が配達するシステムをつくり上げています。無人コンビニは、顔認証とQRコードの会員登録、銀行口座の登録が必要です。さらに、無人倉庫や開発中のドローン配達、地下パイプによる配達、無人配達システムをビデオで紹介していました。


北京はすでにキャッシュレス社会になりつつあります。シェアリング自転車を多く見かけました。電気自動車も走っています。環境対策に力を入れていることが分かりました。

 

 中国職工対外交流センターに感謝

まだまだ報告しなければならないことはあるのですが、すでに字数を大幅にオーバーしました。最後に、今回の北京で日中友好労働者シンポジウムを開催し、訪日団を受け入れ、職場訪問や見学の手配をしていただいた中国職工対外交流センターに感謝申し上げます。とりわけ、連日同行してくださった宋秀菊さん、ホテルに泊まりこんで世話してくれた李晶宇さん、石晶晶さんには大変お世話になりました。ありがとうございました。

文・伊藤彰信 写真・春川広司、野島聡子、岡崎彩子(訪中団)