今年初めに劣悪な労働環境が大きな問題となったユニクロの中国現地の委託工場では、工場移転にともなう補償問題で6月からストライキが続いています。現地の労働者たちを応援するアクションを、日本からもできないか、という要請が来ています。
(参考)ユニクロの中国製造工場で6月8日からストライキ (6月24日)
要請は具体的には、
1、ユニクロを経営するファーストリテイリング社に対して問題解決のために動くよう要請してほしい。
2、グローバル・アクション・デー(7月13日)に、自分の街にあるユニクロ店舗の前で抗議のアクションを起こしてほしい。
3、フォト・アクションとして、日本の友人の皆さんが「支持慶盛工友維權, 要求品牌立即介入」(慶盛の労働者たちを応援します ユニクロは問題解決にすぐに取り組め)といった類のパネルを持って写真を撮ってウェブに掲載してほしい。
「3」は、ユニクロのある場所なら、すぐにでもできるかな、と。
・・・ということで、6月からの経過をまとめてみました。
深セン慶盛工廠の縫製労働者ら900人の闘争ー6月からの経過
今年初めに劣悪な労働環境が大きな問題となったユニクロの中国現地の委託工場では、工場移転にともなう補償問題で6月からストライキが続いている。
労働者が経営側に団体交渉を求めていたにもかかわらず、話し合いの席を全くもうけず、閉鎖のための設備の搬出などを続けたことから、労働者たちは不安を募らせている。当然である。
シチズンをはじめ撤退する企業はすこしでも撤退費用を圧縮するために、事前に労働者たちに図ることなく撤退の手続きを進めて、突然撤退を発表し、労働者に不利な条件で補償を受け入れるように要求するからだ。蓄えのない労働者は不利な条件を受け入れざるを得ない。
ユニクロなどファストファッションのお手頃な値段のウラには、このように労働者を商品と同じようにすぐに売り買いできるモノ扱いする構造がある。これは「国際的サプライチェーン」などと呼ばれているが、国際的な搾取チェーンである。
6月からストライキに入っているのは、ユニクロ、G2000などのファストファッションを委託製造している深セン慶盛工廠の縫製労働者ら900人。女性が9割を占める。
6月2日、すでに労働者代表および団体交渉員を選出していた労働者たちは、6点の要求を記載した団体交渉申し入れ書を会社側に提出。会社は受け取りを拒否しただけでなく、逆に工場移転の方針に従うという承諾書にサインを求め、サインしないと500元カットすると脅しをかけてきた。平均賃金が2000元ほどの労働者にとって大変なことである。
6月8日、会社の人事部に団体交渉申し入れ書を直接渡す。会社はタイムカード打刻器を取り外して出勤が記録できないようにした。
6月9日、会社は女性たちの中心になっていたベテラン労働者の呉さんを15万元で買収しようとしたが、呉さんはそれを拒否。その報復としてこの日、会社は呉さんにスマホのショートメールで解雇を通知。出勤しようとした呉さんに対してガードマンが入場を拒否。会社のショートメールが労働者たちに転送されたことで呉さんが解雇されたことを知り、労働者があつまる。警察が出動して呉さんら10数名を逮捕する。労働者たちは呉さんらが連行された派出所まえで夜を徹しての救援。10日までに呉さん以外は釈放された(呉さんはいまも釈放されていません)
6月10日、深セン市宝安区の観瀾鎮政府に陳情。労働者代表8人が政府担当者と面会。翌日に工場に出向くことを約束。一方、工場では会社がミシンなどの搬出を続ける。
6月11日、地元の地域総工会が相談室を工場内に設置。あわせて多数の機動隊も工場内に常駐。労働者は相談ではなく団体交渉を求めている。
6月12日から、団体交渉ではなく設備搬出を続ける会社に対抗して、労働者は工場に寝泊りして職場を守る。その後も深セン市労働局や陳情局などを回るが何ら具体的な支援を得られず。
6月26日、ユニクロ労働問題を追ってきた香港NGOのSACOMがファースト・リテイリング社に、解決のために委託元としての企業的責任を果たすよう公開書簡を送る。 参考:SACOMの公開書簡など(日本語)
6月29日、108名の労働者(うち女性105人)は広東省広州市の陳情庁に赴いて訴え、会社は7月1日に交渉を行うとしぶしぶ認める。
7月1日、会社は突如交渉は一対一で行うと通知(これでは団体交渉ではないが)。労働者らは広州にのこって要請行動を継続。当局は労働者をすかしたりだましたりの対応。広州にのこっている労働者たちは、旅費の節約のため、缶詰と野宿でしのいでいる。広州の労働者たちも支援に駆け付けているが、中には具合の悪くなる労働者たちも。労働者いわく「捕まっている呉ねえさんのためにも、私たちががんばらないと!」。呉さんの拘束は15日を超えたことから刑事事件として捜査が続いている模様。面会した弁護士によると呉さんは争議の行く末を心配しているという。
陳情庁ちかくの公園で野宿していたら住民からの通報で公園から追い出され、食費を節約するために一日一食で我慢している。しかし工場で職場を守っている200人の労働者のことを考えたらこれくらい負けてられないという。しかし中には体調を崩して(流産した妊婦もいる)深センに帰らざるを得ない労働者もいるという。
7月5日、広州で陳情している100人を資金面で支援してほしいという要請が労働者から発せられた。
「いま陳情庁への陳情をつづけている仲間たちは100人。旅館は一人一泊40元、一日の食費は25元、水5元、つまり一日一人あたり70元が必要で100人で7000元。当初の予定では7月8日まで広州に滞在する予定。その日が会社側が回答すると言っている日だから。あと四日あるがそれまでの出費は2万8000元になる。一人が70元カンパして一人を支える、つまり400人からのカンパがあれば何とかしのげます!」
7月6日、当局は大型バスを用意して、労働者たちを広州から深センに送り返した。カンパが呼びかけられた口座の支払いカードは利用できなくなった。
ユニクロを運営するファースト・リテイリング社は、ストライキが報じられた6月中旬に声明を出した以降(6月17日)、具体的な動きをみせていない。
参考:中国 深圳の縫製工場Shenzhen
Artigas Clothing & Leatherwareにおけるストライキについて(2015.06.17)
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7月13日に世界各地でユニクロやG2000などに対して抗議の声を上げるグローバル・アクション・デーを
香港の支援者からは、7月13日に世界各地でユニクロやG2000などに対して抗議の声を上げるグローバル・アクション・デーを準備しているという情報が寄せられている。
また各都市のユニクロなどの前で「支持慶盛工友維權, 要求品牌立即介入」(慶盛の労働者たちを応援します。ユニクロはいますぐ問題解決のために尽力してください)などを書いたパネルをもって写真を撮って送ってほしいとも呼びかけている。
労働者の多くは長年ユニクロなどの製品を手がけてきて、もう数年で定年(中国では女性は50歳定年が多い)という矢先の工場移転や解雇騒動である。労働者たちは経営、当局、ユニクロから無視され、まるでモノのように使い捨てられたかのような扱いを受けながらも、シスターフッドによる労働者同士の助け合いでこれまでの苦難を乗り越えてきた。国境を越えた連帯は、彼女たちの団結をさらに固くするだろう。
今後の具体的なアクションの呼びかけに、ぜひとも注目を!
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★慶盛工廠労働者の団体交渉申し入れ書
深圳慶盛服飾皮具有限公司 御中
私たち会社の従業員は、今回の会社の移転、雇用契約および労働条件の変更、そしてこれまでの長期にわたる多くの違法行為について、党中央精神と関連法規に照らして、会社に対して団体交渉を要求します。会社は早急に担当者を派遣して、時間と場所して従業員と誠意ある労使交渉を行い、従業員が求める以下の点について納得のいく解決を図ることを求めます
1、従業員の入社以来未納になっていた老齢年金の保険料の追納
2、従業員の入社以来カットされてきた時間外割増賃金の支払い
3、従業員の入社以来支給されてこなかった高温手当の支払い
4、従業員の入社以来支払われてこなかった有給買い上げ補償の支払い
5、工場移転後の配置転換および雇用関係変更による補償の確定
6、従業員が不安に感じるその他の団体交渉事項
わたしたちは各部門の労働者代表と団体交渉員をすでに選出しており、広東労維弁護士事務所を交渉の顧問事務所として委託しています。中身のある労使交渉を通じて上記の訴えを解決することを願っています。上記の問題は、会社が長年違法状態を放置してきた事実です。私たちは会社が、矛盾を激化させ、問題解決を遠のかせ、安定と調和をかき乱す挙動をとらないように、この問題に誠意をもって、また自ら掲げる企業の社会的責任を実践してもらいたいと思っています。
経営側が三日以内に書面で回答し、交渉能力のある代表を派遣して、具体的な時間と地点を指定し、従業員を誠実な交渉を行うことを求めます。
深セン慶盛服飾皮具有限公司工人代表
2015年6月2日