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第7次「日中不再戦の誓いの旅」 ―「日中不再戦の誓いの碑」建立から10年、南京を友好訪問

伊藤彰信(訪中団団長)

 日中労交の第7次「日中不再戦の誓いの旅」は、12月11日に出発し、南京を訪問して15日に帰国しました。学生2名が参加し、平均年齢をぐっと下げた訪中団になりました。
 今年は、日中労交の市川誠初代会長が1985年に侵華日軍南京大虐殺遇難同胞紀念館が開館した時に贈った「鎮魂の時計」に刻んだ「誓い」を碑にして建立してから10年にあたります。訪中団は、南京大虐殺犠牲者追悼国家公祭に参加するとともに、電気自動車工場見学、職工サービスセンター訪問など、現場の労働者と交流してきました。
 訪中団は、団長=伊藤彰信(日中労交会長、元全港湾委員長)、副団長=松本耕三(日中労交副会長、前全港湾委員長)、秘書長=藤村妙子(日中労交事務局長、東京の満蒙開拓団を知る会共同代表)、団員=清水英宏(全国自治体労働運動研究会運営委員長)、渡部公一(前目黒区職労委員長)、池田和則(西日本NTT関連労組執行委員)、新崎盛吾(元新聞労連委員長)、吉本賢一(全港湾大阪支部執行委員)、相澤一朗(東洋大学4年)、猪股修平(東海大学4年)の10名です。
 以下、旅の経過と概要を簡単に報告します。

<12月11日>

 訪中団は、羽田、成田、関空から上海浦東空港に着きました。空港には中国職工対外交流センター経済技術交流部副部長の李晶宇さんが出迎えてくれました。バスで高鉄(新幹線)の上海虹橋駅に移動。昼食をとったあと、高鉄に乗って1時間13分で南京南駅につきました。駅には、江蘇省総工会弁公室科長の費震さん、南京市総工会弁公室の付光宇さんが出迎えてくれました。
 駅の近くで夕食をとり、ホテルに向かいました。ホテルは天豊大酒店。南京市中心部の新街口にある南京市総工会が経営する29階建てのホテルです。

<12月12日>

溧水経済開発区企画館で説明を受ける

 8時30分にホテルを出発し、1時間ほど離れた南京市溧水区に向かいました。
最初に溧水経済開発区企画館を見学しました。経済開発区は南京空港に隣接しており、新エネルギー車、空域産業、電子情報、スマート家電などの産業が集まっています。
 続いて開沃(スカイウエル)新能源汽車集団有限公司の工場を見学しました。新能源とは新エネルギーのこと、汽車とはバスのことで大型電気バスの工場です。技術研究室、ボックスカーの組み立てライン、展示室を見学しました。組み立てラインは数人のグループが部品を取り付けていました。展示室には、大型電気バス、小型電気バス、無人自動車、最近開発した電気乗用車などが展示されていました。
 会議室では、会社のプロモーションビデオのあと、党書記で董事長助理の張威さんが説明をしてくださいました。会社は2000年に創立、2011年に再編して現在のグループになった。従業員は約4000人。自動車産業は成長産業であったが、最近は下降している。しかし、当社は労働条件を維持して経営している。従業員は全員、工会(労働組合)の組合員であり、労働協約を結んでいる。苦情は工会の関与の下で調停して解決している。スポーツやイベントの福利厚生に従業員が参加している。貧しい人、病気の人など困難な家庭への手当や見舞金を支給している。
 溧水賓館で溧水区総工会の幹部を交えて昼食をとりました。話題は、新しく開発された溧水区のこと。50万人の都市をめざすという開発計画、エネルギー、水利、自動交通、公園、ごみ処理など都市計画について話が弾みました。

南京職工服務中心の料理教室

 午後は、市内に戻って南京市総工会の職工服務中心(労働者サービスセンター)を訪問しました。センターは2002年に設立され、32人の職員が5つの部門で仕事をしています。①職業訓練、②起業への貸付、③職業紹介、④困難な労働者の生活支援、⑤インターネットを活用した包摂的なサービスの5部門です。行政が行っている就業と社会保障サービスなどと違い、工会の場合は突然困った状況におかれた労働者の緊急支援のためのプラットフォーム的な事業団体です。1階の相談窓口を案内された後、2階の教室を案内されましたが、起業をめざす人たちを対象にした料理教室が開かれていました。
 案内してくれた南京市総工会副主席の劉輝さんの司会で、センターの熊載璽さんを交えて交流が行われました。労働組合としてこのような活動に取り組んでいることに感心しました。団体交渉指導員の教室もあり、交渉委員を養成しているとのことでした。

 夕方からは、江蘇省総工会と交流しました。
 張柯副主席候補が、江蘇省の状況と江蘇省総工会の活動について説明してくださいました。総工会の役目として、①労働者の合法的な権益を守ること、②国の建設に労働者を動員すること、③労働者を代表して国の社会づくりに参加すること、④労働者の文化、思想活動をおこなうことです。要するに労働者の権益を守り、労働者にサービスを提供することです。
 労働と経済工作部の董雷副部長が、①労働者の経済的地位の向上のための模範労働者の表彰、②効率、革新、安全、環境保全などの技能競技大会、③労働者保護のための安全教育、危険個所の指摘などの安全健康活動、④産業労働者のチームづくりなどについて説明しました。
 教育科学技術工会の陳副主席から同工会の活動について説明がありました。
 訪中団を代表して伊藤団長が、「日中不再戦の誓いの碑」を南京紀念館に建てる際にお世話になったことにお礼を述べ、「誓い」を実現するために、安倍政権が中国敵視を煽りながら戦争する国へ歩んでいることを阻止し、両国労働者階級の友好発展を発展させることが世界の平和を築く上で重要だとあいさつしました。(あいさつ文参照
 夜は、江蘇省総工会の朱勁鬆党組書記副主席が主催する歓迎宴が開かれました。北京から中国職工対外交流センターの彭勇秘書長、何際霞技術経済交流部部長も駆けつけてくださり、盛大な宴会となりました。

<12月13日>

南京大虐殺受難者追悼国家公祭

 南京大虐殺受難者追悼国家公祭に参加するため、8時にホテルを出発し、侵華日軍南京大虐殺遇難同胞紀念館に向かいました。松岡環さんの銘心会の皆さんと同じバスです。国家公祭には、彭勇秘書長、何際霞部長、張柯副主席も一緒に参加しました。前から4列目、私の隣は旅日華僑中日交流促進会の林伯耀さんでした。
 国家公祭のあと、彭勇秘書長、何際霞部長と一緒に食事をとりました。午後、ホテルで休憩した後、侵華日軍南京大虐殺遇難同胞紀念館を見学しました。偶然、南京師範大学の林敏潔教授にお会いしました。日本語学科の生徒たちが日本人の団体の案内をしていました。
 17時30分からキャンドル祭に参加しました。急いで夕食をとって、19時30分から創作オペラ「ラーベ日記」を鑑賞しました。この日初めて上演されたもので、南京安全区国際委員会の委員長を務めたジョン・ラーベをはじめ、ミニー・ヴォートリン、ジョン・マギーたちの南京市民を守る活躍を描いた作品です。

<12月14日>

 午前中、2015年12月にオープンした利済巷慰安所旧址陳列館を見学しました。中国各地の慰安所、日本、アジアの慰安所の資料が展示されています。南京での虐殺、強姦を契機に慰安所が軍の管理下に置かれるようになり、強制的に女性が連れてこられるようになっていく経緯が分かるようになっています。
 午後は、長江ほとりの南京大虐殺遭難者中山港記念碑を訪れました。また、1968年に中国独自の技術で完成した自力更生の象徴である長江大橋を見学しました。夕方、ホテル近くのスーパーで買い物をしました。
 夜は、南京市総工会の孫強党組書記常務副主席が主催する歓送宴が開かれました。ポケトークのような中国製の音声翻訳機を使って会話が弾み、楽しい夜となりました。

南京市総工会主催の歓送会

<12月15日>

 南京駅から上海まで高速鉄道を利用し、上海虹橋駅から浦東空港まで車で移動しました。浦東空港で昼食をとったあと、夕方の便で羽田、成田、関空へと飛び立ちました。
 江蘇省総工会の費震さん、南京市総工会の付光宇さん、通訳として全行程を同行してくださった李晶宇さんには大変お世話になりました。

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