紙芝居「静かなる悪魔 知られざる731部隊」について

根津公子 (元八王子市立石川中教諭)

 「これからお話しする事実は、戦争中に東大など最高の学問を身につけた医者たちが行った犯罪である事を、心にとめてください。」で始まる紙芝居。細菌実験、凍傷実験、ネズミの飼育、少年兵の教育、生体解剖・・・、13の場面を描き、ことばにする。1994年、八王子市立石川中の2年生12人が作成したもの。

1994年5月末、「陸軍中野学校と731部隊展」実行委員会から、「731部隊について中学生に何かのかたちで発表してもらえないか。部隊展は9月。」と私宛に話がありました。当時私は2年生の担当、石川中学校は平和学習に力を入れており、3年次のひろしま修学旅行に向け、修学旅行実行委員会が立ち上がったところでした。同実行委員会からの依頼に、「今は無理」と断ろうかとも思ったのですが、生徒たちへの依頼を私一人の判断で断るのもどうかと思い、修学旅行実行委員会で話をしました。すると、「先生が『日の丸』を下ろした(注)から声がかかったこと。勉強して紙芝居を作ろうよ」。一人が発言すると、皆それに大賛成。不安は実行委員会担当の私だけでした。
期末テストが終了した7月初めから、日本の侵略及び731部隊についての学習を始めました。まずは、映画「侵略」と「黒い太陽731部隊」を学年全体に呼びかけて観ました。冷房設備がない、午後のうだるような暑さの中、自由参加にもかかわらず、ほとんどの生徒が観たのを思い出します。
そして夏休み、修学旅行実行委員の生徒たちは部活動とうまく折り合いをつけながら連日、図書館にある本や私の持って行った本を読み、意見交換し、8月後半から紙芝居づくりに取りかかりました。8月末に完成。9月には「陸軍中野学校と731部隊展」で上演しました。上演に先立ち、朝日、毎日新聞が写真入りで、大きく報道してくれました。日本会議が政治を支配する今だったら、「偏向教育」呼ばわりされ実現しなかったと思います。
新聞報道の反響は高く、町田の実行委員会からも声がかかり上演。石川中でも保護者からも評価され、以降、紙芝居は文化祭や後輩たちの平和学習で活用され続けました。
2000年3月末、「同一校10年で異動」に該当した私は、荷物を運び出す作業をしていて、紙芝居がなくなっていることに気づきました。施錠した被服準備室に保管していたので、紛失するはずがないのに、です。
この直前に父が亡くなり、私が休暇を取っていた間に盗まれたことに間違いはなく、校長を問い質したのですが、返事をしてもらえませんでした。八王子市教委が撤去した、と私は思っています。もっと追及すべきでした。今さらながら悔しいです。
いま私の手元にある紙芝居は私用にコピーしておいたもので、実物は4つ切り画用紙でした。

(注)1994年3月の卒業式の朝、校長が職員会議の決定を反故にして校庭の掲揚塔に「日の丸」を揚げたことに対し、生徒たちからは抗議の声が沸き起こった。私は職員会議の一員として職員会議の決定に戻そう、石川中の民主主義を護ろうと、校長の揚げた「日の丸」を下ろして、減給1月処分を被った。

*講演当日の紙芝居上演はユーチューブ( https://youtu.be/dckUxnb-vX8 )で公開されています。