日中国交正常化50周年記念緊急集会(2022/4/14・衆議院議員会館)

日中国交正常化50周年記念緊急集会に参加して

日中労交事務局長 藤村 妙子

 4月14日衆議院議員会館で開かれた集会にスタッフの一人として参加した。当日は、集会開始前から次々と集まり、関心の高さを感じた。そして、参加者たちは、ウクライナで起きている戦争や今日本で流されている報道には満足できず真実を知りたいと真剣な表情で挨拶や講演を聞き入っていた。当日の内容を簡単にレポートしてお伝えしたい。(当日の講演などは、YouTubeで視聴する事ができる。)

日中国交正常化50周年 本来なら国が何らかの行事をすべき

村山談話の会藤田高景理事長 主催者挨拶に立った村山談話の会藤田理事長は「1972年9月29日日中国交回復から50年の今年、本来であれば国が何らかの記念行事をすべきであるが未だにその動きは無いようだ。それどころか中国への敵視政策が行われている。中国は日本の隣国であり、最大の貿易相手国でもある。今、ウクライナで戦争が起きている。故菅原文太氏は『政治の役割は、人々の頭上に爆弾を落とさせないこと、そして人々を飢えさせないこと』といった。しかし、今の日本の政治は真逆のことをやっている。いつまでもアメリカの手先になっているのではなく、自主独立を目指す『キックオフ』の集会にしたい」と語った。

アジアの平和と繁栄のために日中の協調と友好を

東日本国際大学名誉教授・政治評論家の森田実氏 東日本国際大学名誉教授・政治評論家の森田実氏が来賓のスピーチを行った。「今の外務大臣林芳正は、以前は日中友好活動をやっていたのに、中国脅威論を喧伝し、近隣国との外交を拒否している。今や中国との関係が大切だということを言う政治家はほとんどいなくなり、中国に対して酷い表現をしている。まるで皆が石原慎太郎になったようだ。隣国との平和を保たなければだめなのに、政治家が感情で動いている。これは非常に危険な兆候だ。アジアの平和と繁栄の肝は、日中の協調と友好にある。」と89歳の年を感じさせられないかくしゃくとしたスピーチだった。
沖縄の風代表伊波洋一参議院議員 続いて来賓の挨拶に立った沖縄の風代表伊波洋一参議院議員は「2019年に日中首脳会談を行った当時の首相安倍は、相互信頼関係、経済関係、国民交流などの33件の合意をした。この合意は今でも生きている。しかし、彼は戦争法を成立させ、安倍を引き継ぐ菅・岸田政権は、与那国や八重山などの南西諸島にミサイルを配備する、重要土地規制法の成立、今や敵基地攻撃能力を持つとまで言っている。台湾有事を日本有事にするための動きが強まっている。米軍に戦争を開始させてはならない。私たちは今、引き返さなければならない所に来ている」と沖縄で進む動きを暴露しながら挨拶をした。

軍国主義の亡霊は今、蘇がえりつつある

林伯耀旅日華僑日中交流促進会共同代表連帯の挨拶は林伯耀旅日華僑日中交流促進会共同代表がおこなった。「孫文は『日本は、西洋覇道の番犬になるのか、東洋王道の干城となるのか』と言った。孫文が生きていたら今も同じ言葉を言っただろう。日本は再び帝国主義者と一緒になって大陸を破壊するのか、東洋の仁義に基づいて平和の要になるのかという事が問われている。1972年に日中国交正常化した。中国ではかつて侵略した国と友好関係を結ぶことに心配する声が沢山あった。」と様々な交流友好の中での経験を語った。そして「今、軍国主義の亡霊が蘇るようだ。『暴支膺懲(ぼうしようちょう)』の時代が再びやってくるようにさせてはいけない。来年は関東大震災から100年になる。過去の歴史をもう一度見つめ直す時だ。」と現下に広がる反中の言説を批判しながら、過去と向き合うことの大切さを力説された。
 挨拶の後、日中友好の歌が田偉東方文化芸術団長から披露された。

日本はアジアを封じ込める役割を果たしてはならない

羽場久美子青山学院大学名誉教授・神奈川大学教授 講演の第一として、羽場久美子青山学院大学名誉教授・神奈川大学教授が「中国は敵ではない。東アジアは平和と繁栄の基礎」と題する講演を行った。「アメリカは中国封じ込めに躍起となっている。こうした中で、ロシアがウクライナに侵攻した。この侵攻の前からウクライナ周辺に武器と部隊が集められてきた。一方ウクライナにはアメリカから武器が持ち込まれ、アメリカ軍がウクライナ兵に訓練を行っていた。ウクライナは、ヨーロッパとアジアを結ぶ要にあり、様々な民族が住んでいる。武器を渡した国ではなく、渡された国が戦場になっている。
 今はパワーシフトの時代だ。世界地図を東を上に回転させると日本列島は、ロシア・朝鮮半島・中国を覆う弓のようにある。アメリカから見ると約3000㎞の自然要塞。ウクライナ戦争に乗じた日本の軍国主義復活を許してはならない。日本は東アジア封じ込めの役割を果たすのではなく、東アジアの共同発展に寄与する存在にならなければいけない。」などを豊富資料絵図(PDF)を使いながら講演した。

アメリカ本土の盾にされる日本

 カンパアッピールが高梨神奈川歴史教育を考える市民の会会長からあったあと、纐纈厚山口大学名誉纐纈厚山口大学名誉教授教授から「日中対立を促すアメリカの軍事戦略」と題する講演があった。「2021年6月のサミットで中国と台湾の『両岸問題が言及された』と日本のマスコミや政府はセンセーショナルに騒ぎたてたが、実はこの問題は70項のうち60項目、中国との距離の取り方は国によって異なる。アメリカは「両岸問題は平和的に解決を促す」というあいまいな態度をとっているが、日本側は「台湾有事の時は、周辺危機事態として対処する可能性がある」とアメリカに伝えている。まるでアメリカから「用意はできているか」と聞かれ「大丈夫です」と答えているかのようだ。アメリカは軍事戦略を変え、自国の軍隊を出さなくても済むように「対等同盟」を結び、旧来の対テロ戦争とは異なり国家間の紛争に対処しようとしている。日本をアメリカ本土の盾にしようと様々軍事物資を売りつけ、アメリカの軍需産業は儲けている。今度のウクライナ戦争では総額100兆円の軍事予算となっている。
 中国が攻めてくるかのような言説があるが、中国は資源大国ではない。14億の人々のために食料を確保し、生活向上のために生産力を高めなくてはならない。貿易の相手国日本を攻め込む必然性はない。「台湾有事」についても台湾の問題は台湾に住む人々の問題であり、中国の内政問題である。他国が干渉するべきではない。」等現在世界を覆う問題に対して鋭く切り込む内容だった。

軍事同盟をなくし、相互の人権尊重を

伊藤彰信日中労交会長 最後にまとめとして伊藤日中労交会長から「『争えば共に損し、和すれば共に益する』という言葉がある。最近は『争えば儲けるやつがいる』ともいえるが、争えば殺し殺されるのは民衆である。今こそ、日中共同声明の意義を再確認すべき。そして、軍事同盟をなくし、相互の人権を尊重する世界を作ろう。」と結びの言葉があった。
 集会は、9月28日に大集会を行うことが司会の方から案内がありおわった。

 以上のように盛りだくさんの内容であったが、時節にマッチしたとても有意義なものだった。YouTubeで視聴できるので、多くの皆さんに見て、考えていただきたいと思った。