伊藤彰信
関東大震災96周年「中国人受難者追悼式」が9月8日、東京都江東区の東大島文化センターで開かれた。
主催者を代表してあいさつした一橋大学名誉教授の田中宏さんは「この会場で初めて追悼式を開くことができた。この場所は関東大震災が起きた翌々日の9月3日に300人近くの中国人が虐殺されたところである。現在、嫌韓、ヘイトなど排外主義が高まっている。96年前に何が起きたか見つめ直し、今の日本を考える機会にしてほしい」と述べ、「虐殺は、内務省が『朝鮮人が暴動を起こしたと認定した』ことによるものであり、流言飛語によって民衆が起こしたものでなかった」と指摘した。
黙祷のあと、遺族を代表して王旗さんと周江法さんがあいさつした。王さんの祖父・王希天さんは、9月9日亀戸警察署に逮捕され、12日に日本軍によって逆井橋のたもとで殺され、遺体は切り刻まれて中川に投げ込まれた。王希天さんは在日中国人労働者のために「僑日共済会」をつくった人であり、1918年「中日共同防敵軍事協定」反対運動を周恩来氏とともに行い、官憲から「反日の巨頭」と睨まれていた人物である。周さんは、大島町に多く住んでいた浙江省温州・処州出身の中国人労働者・行商人の遺族を代表してあいさつした。現在、日本政府に関東大震災で虐殺された700余人の中国人に対する謝罪と賠償を求めて闘っている。
中国大使館のあいさつの後、日本側から社会民主党副党首の福島みずほ参議院議員、中村まさ子江東区議会議員があいさつした。福島さんは「日本では嫌韓が官民ともに高まっている。日本は歴史の真実に学ぶのかヘイトを続けるのかの岐路にある」と警告した。中村さんは「大島8丁目で生まれ育った。関東大震災のときの朝鮮人虐殺は学校でも教わったが、中国人が虐殺されたことは10年ほど前に知った。江東区には3万人の外国人が住んでおり、その半数は中国人である。外国人とともに暮らせる平和な社会をつくりたい」と述べた。
在日朝鮮人歌手の李政美さんが弔歌を歌う中、参列者が献花をして追悼式は終了した。
関東大震災では、朝鮮人、中国人、社会主義者、労働組合指導者が殺された。この虐殺を侵略と植民地支配との脈絡で捉えなければならない。日本の労働者は、第一次大戦後、中国で中国人労働者とともに闘った。東京の南葛地域は、工場が密集し、労働者の街であった。日本の労働者も朝鮮人、中国人と手を組み始めていた。権力にとって、反植民地運動、独立運動を弾圧するためには、日本の社会主義運動、労働運動も弾圧する必要があった。関東大震災の戒厳令のもとで虐殺を実行した。そして、時代は大正デモクラシーから戦争へと変わっていく。
自衛隊は、阪神大震災の時も東日本大震災の時も、「港湾労働組合が救援物資の荷役を拒否している」というデマ情報を流した。いま、戦争に反対する労働組合への弾圧が行われている。安倍政権は、侵略や植民地支配の謝罪や反省をすることなく、緊急事態条項の新設を含む憲法改正を実現しようとしている。外国人労働者の導入をすすめ、「嫌韓」を煽り、中国敵視政策を続けている。
さて、日本の労働組合は、何をめざして、どのように闘えばよいのか。
関東大震災中国人受難者を追悼する会は、このたび「東えん惨案―史料が語る1923年関東大震災中国人虐殺事件」を発行した。A5版16ページ、300円。連絡先は、〒136-0071 東京都江東区亀戸6-57-19 丸字本社ビル6階 亀戸法律事務所。電話080-1142-2515