台湾:エバー航空スト、奮闘の17日間で締結された団体協約とは?(7/7)

7月6日に団体協約を締結して解決したエバー航空の客室乗務員が加盟する桃園市客室乗務員職業組合の17日間に及ぶストライキには、2300名の客室乗務員が参加しました。以下は、台湾の社会運動ウェブメディア「焦点事件」の報道の訳です。交渉妥結後にエバー航空本社前に設置されたストライキ・テントでの報告集会の様子も画像でUPされています。

原文:長榮空服員罷工》苦戰17天 團協簽了些什麼?

最後の記者会見には、労使双方とともに労働部(省)の部長、桃園市長なども顔を見せています。

記者会見の模様(映像

桃園市客室乗務員職業組合のfacebook

以下、「焦点事件」からの翻訳です。

<会員=I・Y>

=================

エバー航空客室乗務員スト:奮闘の17日間で締結された団体協約とは?

2019年7月6日

焦点事件 記者 王子豪

【写真】団体協約締結後、南?[桃園空港近く、エバー航空の本部がある]のストライキテントに戻った組合交渉代表らは夜の小集会を行った。集会では最後に組合員たちがステージに上がり、スト檄布にピンクの塗料で手形を押した。手形を提起した組合員は「これをずっとやりたかったの。17日間待ってやっと実現した」と語った。(撮影:王子豪)

客室乗務員労組は7月6日にエバー航空と団体協約を締結し、ストライキは9日には完全に解除されることとなった。6月28日、エバー航空の林宝水会長が組合に対して「話がしたい」と持ちかけ、「6・28提案」を提起した。その日の夜に組合は投票を行った。翌6月29日に提案を受け入れることを決めたが、その日の午後に会社側は、組合が提起した「争議後の処分禁止条項」を拒否したことで協約は締結されず、ストライキは継続した。またその後に伝えられた会社側の「平和義務条項」によって双方の隔たりが拡大したが、7月6日に最終的に合意に達した。6・28案では詳細が不明確だった「争議後の処分禁止条項」と「平和義務条項」の具体化がもたらした結果である。

◎組合の「争議後の禁止処分条項」

6月29日に組合が提起した「争議後の処分禁止条項」は、「組合員資格およびスト参加は組合が認定する」「スト参加の組合員の権利をスト以前の状態に回復する」「会社はスト参加者に対して法的追訴および補償請求は行わない」「不当労働行為については労働部[省]不当労働行為審査委員会が認定した後は、会社はそれ以上の再審査申請を行わないこと」。

このうちストライキの条件は組合が決めるという原則について、7月2日の交渉では、押し通すことができず、案件ごとに処理することになった。これは「18人のスト参加」(※)問題を含む、ストライキ期間中に「職場放棄」と認定された27人に関係する。この問題は労使双方が推薦する委員3人から構成される調査委員会によって結論が出されることになった。今後もし同様の案件が出た場合も、この方法で対処することになった。

(※)訳注:ストライキ指令が出された6月20日16時の時点で、搭乗手続き業務をしていた18人の客室乗務員がストライキに参加したことに対して、会社が「職場放棄にあたる」として処分することを明言していた問題

「ストライキ以前の権利を回復する」という部分について、そのうち一番重要になるのは、5月8日に会社が出した通知である。赤字を理由に年末一時金と賃上げを凍結し、優待チケットも廃止するが、ストライキに参加しない職員についてはこの限りではないとした内容である。このうち年末一時金と賃上げについては組合員と非組合員を区別はせず、優待チケットの廃止についても会社側はストライキ参加者を対象にしたものではなく、「制度は全廃し、会社に貢献した職員への新しい奨励制度を設ける」としていた。

7月6日の交渉では、一か月のうちに他社の航空券購入に対する優待制度は復活させるが、エバー航空のチケットについては、漸次的な復活を計画しており、今後二か月のうちに別途協議することとなった。労働部[省]と桃園市政府は6日の交渉後の記者会見で、優待チケットに関する福利厚生は「原則一致」を順守すべきだと述べた。

組合が提起した「再審査請求は行わない」ということについては、会社側は「もし組合の側が今回のストライキは法律にのっとって行われたというのであれば、会社はそれを尊重する」ことを約束した。「不当労働行為と認定された後は再審請求をおこなわない」という条項については議論がされなかった。

◎会社側の「平和義務条項」

会社が提起した「平和義務条項」は、6日の文言協議で、組合は3年間はストライキを打たないことに最終的に合意した。しかし「労使紛争処理法」[労組法の間違いか?]第35条第2項の権限は保留する、つまり会社が労働組合を弾圧する不当労働行為、あるいは不誠実団交があれば、組合はスト権を行使することができる、ということである。

会社が提起した「平和義務」にあった「職員に対する嫌がらせ、排除、差別などの違法行為あるいは不当な対応を行ってはならない」、「会社、会社役員、職員、株主などに対して事実に基づかずに侮蔑したりけなしたりしてはならない。違反者には違約金を科す」「団体協約事項に関するストライキをしてはならない」という要求のほか、他の労使紛争でも持ちだされるスト予告期間「ストライキの30日前にはストの期日、時間、ピケ方式を通告しなければならない」という要求について、「嫌がらせ、差別」「侮蔑」の条項については他の法律の範疇であり、また「スト予告期間」についても3年間はストを打たないという合意があるということで、[すべて]協約の文言から削除した。

◎その他の重要な合意内容

他の条項については、おおむね6月28日に提案がベースになっている。「待遇の改善」については、時給計算の「日払い費」をフライトごとに計算する「飛行安全服務報奨金」にすることで合意した。これにはフリーライダー禁止条項を付けなかった。

「飛行安全服務報奨金」の計算方法は、BRで始まるフライトコードで長距離便には500元、短距離便には300元の飛行安全服務手当が支給され、PNC便(2チーム、片道勤務)はその半分となる。エバーが航空機と乗務員をリースしている立栄航空(UNI AIR)のB0便は、エバー社内の「立栄フライトチーム」の客室乗務員が搭乗するが、国内の短距離便に何度も搭乗するので、手当の算出法は別途行うことになった。

いわゆる「過労航路」については、組合は「Uターン」(同じフライトチームで戻ってくる)航路の一部を、渡航先で一泊する勤務体系に改善するよう求めていたが、BR198、BR108、BR184の三つの東京航路について、10月から3月の冬季6か月間について一泊勤務とすることで合意した。BR716北京航路については6月から8月の雷雨期と4月の滑走路保守時期の4か月間を一泊勤務とすることになった。

会社側が拒否してきた「取締役会への労働側代表の参加」については、組合側も形式には固執せず、「経営方針の決定の透明性」という中身を追求することになった。定期的な労使の意思疎通、減員や渡航先での休憩時間を削減する際は、組合と交渉しなければならないことも団体協約に盛り込んだ。客室乗務員への処分を決める「人事評価委員会」には客室乗務員が選んだ5名の教官を入れて、ローテーションで委員会に関与することとし、発言権と投票権のある陪審委員を一人選出して、ほかに一名の客室乗務員が当事者として同伴する協約を結んだ。