緊急市民集会「中国・北朝鮮脅威論を超えて」に300人参加(3月28日)

緊急市民集会「中国・北朝鮮脅威論を超えて」(3月28日)

緊急市民集会「中国・北朝鮮脅威論を超えて―東アジア不戦共同体の構築を目指して―」が3月28日、衆議院議員会館で行われ、300人が参加しました。「村山首相談話を継承し発展させる会」が主催し「東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会」が共催したものです。

集会は、柳条湖事件を題材にした歴史紙芝居「赤い夕日」のあと、モデレーターの木村朗(鹿児島大学教授)さんの進行ですすめられ、村山首相談話を継承し発展させる会の藤田高景さんが主催者あいさつをし、平和フォーラムの福山真劫共同代表が連帯のあいさつをしました。

5人の講師が講演しました。ジャーナリストの高野孟さんが「台頭する中国脅威論と東アジアの平和」、元内閣官房副長官補の柳澤協二さんが「抑止力を超えて~戦争学で考える中国脅威論」、早稲田大学大学院教授の李鐘元さんが「切迫する北朝鮮問題と東アジアの平和」、軍事評論家の前田哲男さんが「安倍政権の対北敵視政策がもたらす悪夢―『朝鮮戦争』から何を学ぶか」、「週刊金曜日」編集部の成沢宗男さんが「米国の対北朝鮮核攻撃計画―ICBM実験に端を発した危機の根本要因とは何か」と題する話をしました。

問題は『中国に負けてたくない』という日本人の優越意識だ

高野さんは「冷戦構造の崩壊後、日本の仮想敵国がソ連から、北朝鮮、中国へ変化してきたことは自衛隊員の失業対策のようなもの。中国海警が尖閣諸島周辺海域で領海侵入しているというが、月3回、1回に3~4隻、侵入時間は2時間、事前通告しての侵入である。野田政権が国有化を宣言したことに端を発している」と述べました。

柳澤さんは「中国は大国になった。成長の限界が見えない。それが脅威論になっている。戦争する条件は、勝つこと、被害を含めたコストが膨大でないこと、戦後の安定的秩序が形成できることであるが、米中戦争は限定戦争であっても、経済的相互確証破壊と世界経済の混乱は必至である。誤算による戦争の可能性は否定できないが、日本は戦略的均衡を模索すべきである。問題は『中国に負けてたくない』という日本人の優越意識だ」と述べました。

李さんは「金正恩政権の対話攻勢は一時しのぎではなく戦略的な枠組みづくりである。韓国の人口の半分は38度線から南50キロ、ロケット砲の届く圏内に住んでいる。韓国が平和を求めるのは当然だ。非核化のロードマップは時間がかかる。見返りとして制裁緩和、経済支援、平和協定、国交正常化が予想される。北がICBMの放棄を宣言すれば米国にとってはひとまず安心できる。中距離ミサイルの日本への脅威は1996年から存在する。圧力だけで対応できる問題ではない」と述べました。

緊急市民集会「中国・北朝鮮脅威論を超えて」(3月28日)

米国の主張ばかり報道するマスコミの責任

前田さんは、朝鮮戦争を振り返りながら「日本に駐留していた米占領軍5万人は根こそぎ朝鮮戦線に投入され、日本全土が前線基地になった。日本の再軍備が進み、特需景気に沸いた。もし朝鮮戦争が再発したら、米軍基地からの出撃は間違いない。現在の北朝鮮は日本全土を射程に収める中距離ミサイルを持っている。国際法上、軍事支援の中止、基地使用の防止をしなければ、中立国とは認められない。日本は、安保条約の事前協議条項にもとづいて在日米軍基地の戦争使用にノーをいい、東アジアINF(中距離核戦力全廃)条約を締結し、東アジア不戦共同体の構築を目指すべきだ」と述べました。

成沢さんは「挑発とは強い立場の者が弱い立場の者に反発させようとするものである。北朝鮮は米国の核攻撃に一貫してさらされてきた。米国は核の先制使用を否定していない。そもそも米国は国際法を無視して、意に沿わない国家の転覆を実行してきた。米国は朝鮮停戦協定60項『外国軍隊の朝鮮からの撤退と朝鮮問題の平和的解決その他の諸問題を交渉により解決する』ことを履行してこなかった。北朝鮮が何を考えているのか知らせず、米国の主張ばかり報道するマスコミの責任でもある」と述べました。

国会議員のあいさつ、会場発言を受けた後、筑波大学名誉教授の進藤榮一さんが「アメリカの歴史は侵略の歴史であり、アメリカを『善』とらえることは間違えである。世界は大転換期に入っている。ヨーロッパ、アメリカの時代は終わりアジアの時代である。2014年の先進G7と新興G7のGDPの逆転が起きている。21世紀は軍事力の時代ではなく、経済力、社会力の時代である。中国の発展はすさまじい。制裁が機能したことはない。第二世代の核兵器は脅威にならない。北の核を容認するしかない。リアリズム外交に徹して、平和を追求する以外にない」と総括発言をし、安保法制違憲訴訟埼玉の会の石垣敏夫さんが閉会のあいさつをして集会を終わりました。

<報告・写真 伊藤彰信>