日中労交2022年度総会  ~100年に一度の大変動の時代に「日中不再戦の誓い」の意義を確認

藤村 妙子(日中労交事務局長)

総会において更に活動を発展すると確認

 5月8日午後 東京大田区蒲田の日港福会館において日中労働者交流協会(日中労交)の2022年度総会が開かれました。総会はWEB併用で行われ、委任状も含め38名で行われました。そして、総会当日に新たに加入した方がいたことは、大変良かったと思います。

 第一部の議案については、「2021年活動報告」「2022年活動計画」「決算・予算案並びに会計監査報告」「役員選出」がそれぞれ提案され、了承されました。

 コロナ禍の中、昨年は訪中も国内でのツアーもできませんでしたが、日中国交回復50年の節目の年として集会を行ったことや南京から毎月のように送られてくる「南京国際平和通信」や「人民網日本語版」を会員に知らせるとともにホームページに載せ日中友好の糧としてきました。そして、今年は引き続き日中国交回復50年の各種催しを他団体と協力しながら行うことを決めました。また、国内ツアーの第一弾として6月30日に行われる大館市主催の「花岡事件 中国人殉難者慰霊式」に参加する予定です。また、秋には長野の「満蒙開拓記念館」へ訪問する計画であることが了承されました。この国内ツアーには、是非とも若い人たちの参加を呼び掛けたいと思っています。

憲法と「日中共同声明」に基づく外交を

 第二部は伊藤会長の「日中共同声明を発展させ、日本国憲法に基づく国連憲章の改正を」という講演でした。私は、2021年4月の日米首脳会談において「台湾条項」が書き加えられ、再び日中戦争が起きるかのような喧伝が行われている中で私たちが考えていく視座を提起するとても有意義な講演だと思いました。しかも現下の「ロシアによるウクライナに対する侵略」という事態の中で、これを奇禍として軍事費増強、敵の中枢への攻撃をも行う「反撃能力」の整備、更には憲法改悪まで目論まれている中で、労働者市民が現政権批判において不十分な点を明らかにした示唆に富んだものでした。

 日中共同声明を結んだ田中角栄が「一番の安全保障は隣国と仲良くすることだ」と言っていたと伝えられています。しかし、現政権は隣国と仲良くするどころか、過去の反省もなく、アメリカと一緒に隣国への非難の急先鋒に立っています。そして、平和運動の側でも隣国との平和友好のために交流と連帯を行うことを躊躇する傾向が残念ながらあります。私たちの役割は「子々孫々、世々代々にわたる両国労働者階級の友好発展を強化し、アジアの平和を確立する」(「日中不再戦の誓」より)ことだと改めて思いました。

 また、今回の講演で「目から鱗」だったのは、私たちが今回のウクライナで起きていることを批判する時によって立つ立場は「日本国憲法」と「日中共同声明」にあるという事でした。

ロシアのウクライナ侵略は「国連憲章違反」と言われていますが、「武力による威嚇と武力の行使を慎む」(国連憲章第2章4項)というように「慎む」と書かれているだけで明確に否定していません。そして、お互いに「武力の行使を慎もう」と呼びかけても紛争(戦争)が止まらない場合は、国連軍が到着するまで「自衛権の行使」を認め、また「集団的自衛権

」も認めています。そして、「国連軍」が武力による制定を行うと定めています。話を聞きながら「朝鮮戦争」を思い浮かべていました。朝鮮戦争時には「国連軍」が武力をもって威嚇し、停戦となりました。現在も「終戦」していないので、「朝鮮戦争国連軍本部」は日本の米軍横田基地内の一角にあります。まだ終わっていない戦争が現実にあります。ロシアや中国が(今回以外の戦争ではほとんど場合アメリカが)常任理事国として「拒否権」を使うから戦争が終わらないのではなく、「武力のバランスによる平和を謳う国連憲章」(レジュメより)だから難しいという証左ではないでしょうか。

ではどうすればいいのかという事の答えは、日本国憲法の前文と第9条に象徴される「武力の威嚇・行使の放棄と戦力の不保持」と日中国交回復時の共同声明「主権及び領土の保全の相互尊重、相互不可侵、内政に関する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立する」、「相互の関係において、すべての紛争を平和的手段によって解決し、武力又は武力による威嚇に訴えない」(第6項)「アジア太平洋地域において覇権を求めるものではなく、このような覇権を確立しようとするいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する」(第7項)に基づいて「国連憲章を変えるべき」であると話されました。「日本は、日米同盟から脱却し、非武装・非核、中立を貫き、非同盟諸国と共に世界的に平和を築くために努力すべきである」(レジュメの結語)と強調されました。

私は、海に囲まれた島国日本が平和に生きていくためには、近隣諸国との平和友好関係を結ぶことが大切であると考えています。そしてこの平和友好関係を結ぶ際の見本が「日中共同声明」であると思います。今回のウクライナ戦争においても国連で様々な決議や動きがありますが、賛成しているのはヨーロッパやアメリカの同盟国です。世界の人口比から考えれば半分にもなっていません。こんな中で「第三次世界大戦」だという煽られ方もしていますが、誰もが幸せにならない戦争は一刻も早くやめさせなければなりません。日本は、アメリカに協力するようにアジア諸国を廻るのではなく、憲法に基づく平和外交を行うべきだとつくづく思いました。こうした考え方少しずつでも広めるために、今後も活動していくことを改めて思いました。今後WEBを使い「平和友好カフェ」を始めようという試みがあります。こうした100年に一度の転換期だからこそ、自由闊達に意見を交わし、共に考え、私たちの指針である「日中不再戦の誓い」を実践していきたいと思います。