日中労交2024年度総会報告

伊藤彰信

 日中労交の2024年度総会が4月27日に東京・蒲田の日港福会館で開かれました。

伊藤会長あいさつ

 伊藤会長は「日中労交の現在の最大の課題は『台湾有事』を阻止することである。安保三文書によって、中国を仮想敵国として、防衛費の拡大、日米共同軍事体制の強化、南西諸島のミサイル配備、戦闘機の輸出、軍事産業の育成など進められている。経済安保体制は職場でのレッドパージに通じるものであり、人権や民主主義を抑圧する政策がすすめられている。『台湾有事』となれば、全国の自衛隊基地から、民間の空港・港湾を利用した兵器・部隊の輸送が行なわれる国家総動員体制づくりが進んでいる。また、練馬の森の朝鮮人追悼碑撤去にみられるように強制連行と発言することが許されない状況になった。日中労交は、昨年4年ぶりに訪中し、コロナ後の交流を再開することができた。日中労交50周年の今年は、50年の歴史をふり返りながら、新しい会員を獲得し、日中平和友好の強化のために活動していきたい」とあいさつしました。

第一部「総会議事」

 議事では、2023年度活動報告を藤村事務局長が、2024年度活動計画(案)を伊藤会長が、2023年度決算報告を伊藤事務局次長が、会計監査報告を水摩会計監査委員が、2024年度予算(案)を伊藤事務局次長が、それぞれ提案し、承認されました。

 今年度の活動計画の重点は、50周年記念事業を成功させることです。今年度の総会で議論した50周年記念事業のイメージは、昨年度の総会で議論していたものとは変化してきてきました。今年度の議論は、「台湾有事」を阻止するにはどうしたらよいか、日中労交の存在意義、役割はどのようなものなのか、50年を振り返りながら考えようというものです。

 「50年のあゆみ」の出版、8月24日のシンポジウムの開催について確認しました。問題は、その財政の確保です。カンパを集めると同時に「50年のあゆみ」の販売促進です。本の販売促進、シンポの企画運営を行うために50周年事業実行委員会を設置することを確認していただきました。運営委員だけでは力量不足ですので、会員からも実行委員になってもらい、組織をあげて50周年記念事業を成功させたいと思います。

第二部「日中労交の50年を語ろう」 

 第二部の「日中労交の50年を語ろう」では、「50年のあゆみ」の執筆者である藤村事務局長が、日中労交の前史にあたる在華同胞帰国事業と中国人俘虜殉難者遺骨送還運動について説明をしました。平石昇さんは、平坂春雄元事務局長が大阪エルライブラリーに寄贈した段ボール200箱を超える資料から、日中労交関係の資料を見つけ出し整理した3年以上にわたる作業の苦労話をしました。伊藤会長は、日中関係の緊張の高まりに押されて単なる記録ではなく日中友好運動のなかで日中労交が占めた位置と役割を記述せざる得なくなったこと、和解を国家間和解と民衆間和解のふたつの視点から描いたこと、中国人の戦後補償裁判では謝罪、補償、歴史伝承の3っつが和解の条件であったこと、南京に碑を建てた意味は若い人への歴史伝承になること、日中友好運動の入門書になるよう書いたことなどを語りました。

 参加者の語らいの中では、「50年のあゆみ」に詳しく書かれていない、旅順大虐殺、関東大震災時の中国人虐殺、日中友好協会の分裂、技術交流などが議論されました。それぞれの日中関係の事象を断片的に捉えるのではなく、権力を握った中国の労働者と権力を握ったことがない日本の労働者との交流が、時代の変化の中で揺れ動いていく様子を見ていくべきではないかという話になりました。