和解を導いた力 Part4
「生きて来れたのが不思議だ」 被爆者・于瑞雪さんの生涯をふりかえる
10月19日、広島弁護士会館で「被爆者・于瑞雪さんの生涯をふりかえる」と題して和解を導いた力 Part4が開催された。今回の集会で特筆すべきは、コロナ禍が一定の収束を迎えて、于瑞雪さんの遺族である娘さん二人が参加されたことである。三女の于蘭芬さんと四女の于栄春さんである。
お二人からの話を聞く中で、于瑞雪さんの安野での苦しい生活と苛酷な労働が浮かび上がった。同時に、大隊長や3班班長を撲殺したことを「蜂起」したと語っていたことに大きな衝撃を受けた。単に食料分配をめぐる争いから事件が起きたのではなく、抑圧に逆らい、生死をかけた蜂起だったのだ。于瑞雪さんの尊厳をかけた闘いであった。
また、中国に帰国してから工場のトップを務めるまでに活躍されたこと。しかし、日本に強制連行された事実を詮索されないために人民解放軍には入らなかったことなど、政治的立場を配慮してであろう苦悶に胸を締め付けられる思いがした。
われわれが安野発電所建設に係わる中国人強制連行・強制労働に関して、知り得ている事実は本当に部分的なものでしかない。これまでの「和解を導いた力」Part1から4に至る取り組みで明らかになっていることは、当たり前ではあるが、強制連行された中国人ひとり一人の人生があり、その人生に大きな苦難を強いたものだったという事実である。
いま、日本は日米安保体制のもとに再び中国との戦争を準備していると感じられる。再び戦争の惨禍を引き起こすようなことをしてはならない。日中不再戦・日中友好の旗を高く掲げて進んでいかなければならない。これが中国人強制連行・強制労働の歴史事実に対するわれわれの反省と実践でなければならないだろう。
中国人受難者追悼集会を開催
10月20日、現地安野発電所・安野中国人受難之碑前において、第17回「中国人受難者を追悼し、平和と友好を祈念する集い」が開かれた。
今回の追悼集会には、中国人受難者遺族として、于蘭芬さんと于栄春さんが参加された。また、中国駐大阪総領事館の王宏偉副領事、同じく李子楊領事アタッシュが参加された。
追悼式は、厳かな雰囲気の中で進行した。はじめに「継承する会」代表の足立修一弁護士からあいさつがあった。遺族を代表して于栄春さんがあいさつした。その中で、父、于瑞雪さんの苦難の歴史を紹介した。同時に、川原さんをはじめとする中日友好関係者に感謝の意を述べ、こう締めくくった。「世界に永遠に戦争がなく、歴史が繰り返されず、中日両国の各世代が友好を保ち、両国の人々が無事で幸福であることを祈ります。」
王宏偉副領事は、薛剣総領事のメッセージを代読された。薛剣総領事は、「強制連行は、日本軍国主義が侵略戦争において犯した重大な犯罪行為です。」と強く指弾するとともに、「継承する会」などの正義の行動を高く評価し、「私たちは皆さまと共に、歴史を鑑とし、未来に向かって友好の旗印を高く掲げ、中日関係の持続的発展にたゆまず努力していきたい」と述べられた。
式典は、二胡の荘厳な調べを受けながら、参加者全員で献花をして終わった。
投稿者 広島T会員