こんにちは。会員の稲垣です。
天津の爆発事故は、もっと早くに紹介しておくべきでしたが、仕事が詰まっていて遅れ遅れになってしまいました。いろいろな視点があると思いますが、たくさんの労働者が亡くなっていますので、そういった観点からの情報を送ります。以下、香港のウェブメディア「惟工新聞」より。事故翌日のものですので、犠牲者数や情報量に限界がありますが、ポイントはついていると思います。二回に分けて紹介します。
原文はhttp://wknews.org/node/850
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天津の爆発事故:知っておくべき五つの事柄
13/08/2015 – 10:57pm
【惟工新聞 編注】8月12日の深夜、天津で発生した危険な化学薬品の大爆発の被害者は増え続けている。爆発事故を起こした企業とは?犠牲になった労働者と消防士たちとは?なぜ化学薬品がこの地区に大量に蓄積されてきたのか?などについて書かれた「破土」の文章を転載する。文章では、事故の背景の内幕――物流会社による環境評価報告書の虚偽の疑い、労災補償が全額は支払われない下請け労働者の実体、そして救助の過程で犠牲になった消防士らも下請け(委託)制度における被抑圧者であった可能性などに触れられている。猛毒の煙火のなかでどれだけの事実が隠ぺいされようとしているのか。
◆ 天津の爆発事故:知っておくべき五つの事柄
文:左楠
【一】 爆発事故を起こした天津瑞海国際物流有限公司とはどのような企業なのか?
天津公安局は、爆発が発生した正確な位置が天津東疆保税港湾地区の瑞海国際物流有限公司であることを素早く発表した。この会社は民間企業である。会社のウェブサイトによると、2011年に設立され、天津東疆保税港湾地区で登記されている。資本金5000万元。天津埠頭の危険品貨物コンテナ業務を行う大規模中継・集散センターで、天津海事局指定の危険貨物コンテナヤード、天津交通委員会港湾危険貨物産業許可事業所であった。危険化学品貨物のデバンニング(取り出し作業)とバンニング(積み込み作業)、中継運輸、貨物書類手続き、運送・配送、倉庫業務などが主な営業内容。70人の従業員、20人の下請け労働者が働いていた。年間の貨物輸送量は100万トン、年間営業収入は3000万元以上。
敷地面積は46226.8平方メートル、総合ビル、危険品第一倉庫、第二倉庫、中継倉庫、貨物ヤード、消防施設、ゲートブリッジ、変電設備、排水池から構成されている。(図参照)
事故が発生した貨物ヤードには、重コンテナ区(1000立方メートル以下)、空コンテナ区、積み込み及び取り出し作業区が含まれる。
このように危険な貨物を扱う民間企業を設立する際に、しっかりとした安全検査をおこなったのか、また会社は信頼できる保証を提供したのかという疑問が湧いてくる。また、労働者たちに相応の安全研修をおこない、厳格な安全管理を行ってきたのだろうか。
会社のウェブサイトによると、安全管理は他の一般の会社とそう変わることのない消防訓練や危険化学物質に関する研修くらいしか見受けられない。他の国際物流企業と同じように、グローバルな企業文化を謳っており、「トップクラスのチームで、トップクラスの人材育成、トップクラスの業績、トップクラスの企業を目指す!」ことを目標に掲げている。また顧客満足を会社の目標としており、「お客様第一をモットーに、お客様の期待を超える努力を」が社訓となっている。しかしそのような経営理念のなかに、労働者の安全衛生に関する教育と理念を見いだすことはできない。安全よりも効率の追求が目立つのである。
ある報道によると、この会社の環境評価報告書のリスク分析のなかで、火災爆発について検証を行った結果「環境と周辺の人員に顕著な影響を与えることはない」とされた。また同じ報告書では防火施設に関しても自信満々の評価を行っていた。また同じ報告書で、立地について130のアンケート結果を示し、すべての回答者が立地場所に問題はないと答えたとしている。しかし近隣の住民によると、そのような調査票を受け取ったことはないという。
【二】 夜11時過ぎの爆発の犠牲になった宿直の労働者の待遇は?補償はあるのか?
瑞海国際物流有限公司のウェブサイトによると、この会社には70人の従業員と20名の下請け労働者がいた。
下請け労働者とは、瑞海国際物流有限公司と直接雇用契約を結んでいない労働者のことで、派遣労働者の可能性がある。あるいは、雇用契約すらないアルバイト工もいた可能性もある。
2014年3月に施行された「労務派遣法(暫定)」では、企業は臨時的、補助的、代替的な職位において派遣労働者を用いる事ができるが、一社における派遣労働者の割合は10%をこえてはならないとされている。(もし仮に下請け労働者すべてが派遣労働者の場合、)この会社における派遣労働者の割合は違法なものになるが、ウェブサイトには正々堂々とその人数が記載されている。
労災が発生した場合、派遣労働者と正社員では賠償額に大きな差がある。事故が発生した会社は、かなり危険な業務を扱っていたが、このような職場において派遣労働を用いる事が適切かどうかは指摘されてしかるべきである。しかしこのような企業は、天津だけでなく、中国全土においても少なくないだろう。
危険な業務の宿直はだれがやっていたのか? 今回の事故はまだ調査が始まったばかりで、具体的な内容を知ることはできないので、似たようなケースを見てみよう。2014年8月2日、昆山中栄金属製品廠の爆発事故は早朝7時に発生し、97人が亡くなっているが、全員が違法に雇用されていた労働者だった。
今回の犠牲者全員に十分な補償が行われなければならない!
(以下、つづく)
(その2)【三】 消防員のうち、36名と連絡が取れなくなっており、9名の死亡が確認されているが、消防員の身分や待遇は?
【四】 爆発地点は東疆保税港湾区と言われているが、保税区とは何か?
【五】危険な化学薬品の爆発は、すべて偶然の事故なのか?都市部周辺に建設される化学工業への批判が高まっているが、化学工業の発展をどう考えればいいのだろうか?