JCLIF レポート

「中国労働者の抵抗とそれが世界の労働活動家に持たらす意味 」
  報告 エレン・デービッド・フリードマン

ellen_df  1月19日(土)午後、東京お茶の水の明治大学でエレン・デービッド・フリードマンさん(中国広州・中山大学客員研究員)を講師に「現代中国の労働運動 その実像、虚像と将来像」と題する研究が開かれた。労働者・研究者など中国人留学生を含め約40名が参加した。

 フリードマンさんは最近の中国労働運動を特徴づける2つの争議を紹介した。
1つは2009年7月に東北部にある通化鋼鉄で国有企業の民営化に労働者が反対して企業を買収しょうとした資本家を撲殺した事件である。この資本家は企業をもっと効率的に運営するために労働者の解雇、賃下げ、福利の削減を提案したものである。80年代後半から現在まで国営企業の民営化によって9,000万人の労働者が失業させられ、同時に住居も健康保険、年金など社会補償も奪われる悲惨な状況に置かれている。こうした労働者の民営化への怒りが爆発したものである。民営化は中止され、労働者は周辺住民たちの支持を得た。
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 もう一つは2010年5月に広東省のホンダのトランスミッション製造工場で起こったストライキである。1,700人の労働者の内70%が学生の研修生で最低賃金以下の労働で働かされていた。労働者の平均年齢は20歳で不満を爆発させ、ストライキに突入した。ストライキの妨害に労働組合の黄色の帽子をかぶった警察官が動員され、学生たちを排除しようとしたがストライキを止められず2週間続いた。このストによってホンダの中国における全生産が止まった。この工場の労働者は賃金の倍増を勝ち取り、組合役員を選出する権利も獲得した。この闘争をきっかけにストライキは全国に広がった。
上記いずれも組織も上部からの指導もない自発的な闘争であった。労働組合(工会)は労働者の味方をすることなく、経営者や政府・党の意向を代弁している。中国ではすべてのストライキは山猫ストである。そして、労働者は経営者、組合、警察、政府の弾圧をものともせず毎年5万~6万件のストライキで闘っている。

 最後にフリードマンさんは、海外の労働者の中国労働者に対するさまざまな評価を紹介しながら、「われわれは中国労働者階級の資本主義への真っ向からの挑戦に刺激を得られる」と述べた。 報告の後、多くの質問や意見がエレンさんに向けられ、フリードマンさんはそれに鋭く明確に答えた。ある参加者が感想として述べたが、中国の労働者の現状について基礎的な認識を得られる有意義な研究会であった。

 この研究会は一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センター/明治大学労働教育メディア研究センター/Labor Nowの3者共催。

*当日の研究会の様子をUstreamで中継、アーカイブス(録画)している。
http://www.ustream.tv/channel/labor-now-tv

*下の写真は広州ホンダのストライキ中(フリードマンさん提供)<報告・上のフリードマンさんの写真 高幣真公> 


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