カテゴリー別アーカイブ: 民主化運動

沈夢雨:団結はチカラ(2018/7/2)

広州日弘機電(ニッパツの100%子会社)の労働者が2018年に実現した法定住宅積立金と賃上げについて、同社を不当に解雇された沈夢雨さんが論じた文章をざっと訳してみました。懐かしい言い回しなどは、中国の特色ある労働運動ゆえ。


沈夢雨:団結はチカラ
2018-07-02

2018年上半期、日弘公司で、日弘労働者の団結の力を示す二つの事件が発生した。

一、2018年6月19日、日弘は、派遣労働者と派遣から正社員に転換した労働者に対して、派遣身分のときには未納だった法定積立金を遡って納付することとを通知した。これは、日弘労働者たちの要求が実現したということである。

二、2018年の賃金交渉において、経営者とそれにおもねる労働組合執行部の意向を上回る回答を引き出した。当初、経営側は1.66%の基本給引き上げを提示していたが、われわれは6%+200元を勝ち取った。大部分の現場労働者の基本給が400元以上引き上げられる計算になる。年末一時金も経営側の3.5カ月に対して、4カ月+業績分を勝ち取った。

これらの勝利はどのようにして実現したのか。もちろん経営側の恩寵などではない。それは労働者全員の取り組みによって実現したのであり、とりわけ経営側に物申すことを厭わない果敢な労働者の功績が大きい。

一、圧力に屈せず団結して積立金をかちとる

経営側は、2018年1月まで、派遣労働者の住宅積立金を一銭も納付してこなかった。それによって、いったいどれだけの搾取が行われてきたのだろうか。

2018年が明けてから、周辺の工場の派遣労働者たちは積立金を勝ち取っていた。日弘の労働者も次々たちあがった。当初、積立金を勝ち取った人間は2~3人だけにとどまっていたが、すぐに20~30人に増えた。みんなで一致団結して、悪徳派遣業者と悪徳経営者に対して知恵を駆使して対峙し、最終的に積立金をかちとったのである。

その過程では、「出る杭は打たれる」といった警告もあった。たしかに最初に要求したときに、会社は見せしめとして、2名の派遣労働者が派遣会社に送り返されたが、それでもみんなは挫けなかった。逆にますます多くの労働者が積立金要求の隊列に加わり、団結した労働者たちを前に、経営側もお手上げとなり、圧力に屈して、積立金を遡って納付することに同意するほかなかった。

現在、200名近くの労働者が派遣身分のときの住宅積立金を遡って勝ち取ることができた。5000元もの積立金を勝ち取った労働者もいた!

当初、積立金を遡って納付するよう求めた労働者が狙い撃ちされたが、そのときは大部分の労働者のあいだに団結する意味が理解されていなかったからであり、いったんそれを理解したあとは、狙い撃ちされることもなくなった。団結こそが労働者の権利を守る最も有効な手段であり、団結した労働者全員を解雇したくても、そんな度胸は経営側にはなかった!

二、団体交渉に積極的に参加して成果をかちとる

賃金の団体交渉は、われわれ労働者の切実な利害に関係する事柄であり、一人一人が積極的に参加すべきである。しかし経営はさまざまな方法を通じて労働者の参加を阻害する。多くの労働者を交渉に参加させたがらない理由はいうまでもない。

2018年の賃金団体交渉は波乱万丈で息をのむ展開だったといえる。われわれ労働者ははじめて民主的権利を行使した。もちろんそれは、あまり徹底したものではなく、さらに大いに改善の余地はあるにしても、まったく行使しないよりも、はるかに意味のあることだった。

今年は、多くの労働者の参加によって、現場労働者の利益を代表して交渉に臨もうとしていた沈夢雨を、交渉員に推薦することに成功した。経営側とそれにおもねる労組執行部はあらゆる方法でそれを阻止しようとしたが、労働者たちは団結してその企みを跳ね返した。

多くの労働者がウェブ上であるいはリアルの世界でわれわれの交渉代表への支持を表明した。組合執行部は代議員大会で沈夢雨の交渉資格をはく奪しようとしたが失敗した。管理者は職権を濫用して労働者を恫喝し報復したが、それに屈しない労働者は、アンケート用紙への記入や彼女ために証言するといった実際の行動で彼女への支持を表明した。

後日、会社と組合執行部は共同で沈夢雨を不当解雇に追い込んだが、労働者の怒りを治めるために、譲歩せざるを得ず、団結した労働者の要求をのまざるを得なかった。

団結は力だ!小団結は小さな成果、大団結は大きな成果だ!

今年、われわれが積立金と賃金交渉においてかちとった成果は、経営者の慈悲によるものではなく、みんなの努力によってかちとったものだ。団結こそ権利実現のカギである。

この過程において、われわれが勝ち取ったもの利益だけではない。同時に尊厳をもかちとったのだ。解雇された者や狙い撃ちされたものもいたが、それは団結を経験した人数に比べたらずっと少ない人数でしかない!

われわれはまた、経営側のひ弱な実態と組合執行部の醜悪な一面を見た。労働者に対する弾圧は物の数ではなく、まさに「一切の反動派は張り子の虎」である。この張り子の虎は、なかば燃えかかっている。さらなる恥ずべき行為は、さらなる憤激を招くだけで、その代償は計り知れなく高くなるだろう。

もちろん、今回の勝利で警戒を解いてもいいというわけではない。

派遣会社が納付していなかった積立金は遡って納付させたが、日弘自体の積立金問題もある。賃金は挙がったが、経営はかならず別な方法で、それを回収しようとするだろう。たとえば生産量の増加、残業の削減[作業速度UP]、高賃金のベテラン労働者の解雇などなどが考えられる。今回の勝利の地平を維持すると同時に、今後おとずれるであろう暴風雨に備えるために、さらなる団結が必要であり、そうしてはじめて煮込んだ鴨鍋が飛び立つ[手にした勝利を逃す]ことを阻止できるだろう。

仲間たち、がんばろう!

台湾:労基法改悪に反対する学者の声明(2018/1/4)

ひさびさに台湾の話。

新年のNHKニュースを聞いてたら、インタビューに答えて「今年は働き方改革と賃上げの年にする」というナショナルセンター会長の声。思わず「I am ABE」かよ!と叫んでしまいました。

で、昨年末から台湾で続いている労基法改悪反対のうごきですが、いよいよ立法院での本格的な審議がおこなわれるのをまえに、大学人も労基法改悪反対の署名を呼びかけ始めました。労基法改悪のポイントが分かりやすかったので訳してみました。もちろん大学人だけでなく、労働組合や市民団体なども、与党・民進党のかなりでたらめで強引な主張に対して、全国で動きを強めており、本格審議の始まる1月8日からは徹夜の立法院包囲行動を組織するようです。 続きを読む 台湾:労基法改悪に反対する学者の声明(2018/1/4)

暴力で窮乏者を寒空に追い出した政府に抗議する(声明) (2017/11/29)

ひさびさの投稿です。けどちょっと悲しい内容です。

北京郊外の火事で多くの労働者が犠牲になりましたが、北京政府は都市整備の不備の責任を、都市の発展に尽くした労働者に転化して、「ロー・エンド(最下位)人口」と称して、追い出しをすすめています。

これら出稼ぎ労働者の境遇は、若きエンゲルスによる「イギリス労働者階級の状況」に描かれた労働者(とくにアイルランドからの労働者が悲惨)の居住環境を彷彿とさせます。これが習近平氏のいう「21世紀の新しい社会主義」だとしたら、20世紀(初頭)の社会主義のほうがよっぽどマシです。

香港では、申し入れ行動やデモも行われました。

報道はこちら(中国語)

以下は、香港の労働組合や労働NGOによる声明です。 続きを読む 暴力で窮乏者を寒空に追い出した政府に抗議する(声明) (2017/11/29)

広州の労働人権活動家の孟含がふたたび拘束(9月22日)

9月3日に釈放されたという嬉しい情報をお知らせした中国・広州の労働人権活動家の孟含さんが、9月22日にふたたび拘束されたという悲しいお知らせです。以下は、中国の自律的労働運動を支援している香港職工会聯盟のfacebookの翻訳です。

※なお名前の「含」は本当は日へんに「含」ですが、文字化けの可能性があるので、「含」としました。


【二度の下獄でも信念を曲げず、今日、みたび逮捕される】

彼は、何度も中国で労働者の権利のためにストライキを組織した。
彼は、労働者の権利を守るために二度も下獄した。
彼は、労働者の権利を守る活動に参加したことで、それぞれ9ヶ月と21カ月も監獄に囚われた。
彼は、2017年9月3日に出獄し、今日獄中ノートを発表したがその日のうちに、またもや広州警察に逮捕された。
彼の名は、孟含。中国の労働人権活動家だ。

報道によると、今日(9月22日)午後2時30分、広州南沙金州派出所の警察職員8人が孟含の自宅を家宅捜索し、彼を連行したという。連行理由は今のところ不明。しかし今回の事件は前日に自分のウェイボ(微博=中国のSNS)で「獄中札記」を発表したことと関係があると考えられている。(文章はすでに削除されており、今朝がた広州の人権活動家、祥子のfacebookに転載された)

孟含は「札記」のなかで、彼が利得社での争議における労働者の組織化の経歴を記し、労働者の権利擁護の立場を堅持することを述べていた。私たちは、中国政府が言論内容だけで孟含をふたたび逮捕したことについて強い怒りを表明するとともに、すぐに孟含を釈放することを求める。

本組合は、彼の獄中書簡を転載する。その一字一句から、自らの行いに何ら恥じ入ることなく、たとえ下獄していても、いぜんとして労働者の権利を守る行動を尊重しない中国政府に対する批判を続けていることが分かるだろう。

獄中書簡の全文(中国語)はこちら:

以下はその抄録:

私の態度は依然として断固としています。私は私が推進してきた団体交渉が正しかったと確信します。もしこのような行為が犯罪とみなされるのなら、わたしはふたたびこのようなリスクを冒しても労働者の抱える問題を解決しようとするでしょう!

2015年4月、利得社の労働者のストライキが発生し、わたしは無秩序な行動にNGOが介入し、労働法規と知識を宣伝し、労働者が秩序的な組織をつくることを手助けすることに意味があると考えています。いま当時を振り返り、すべてがどのように発生したのかを、真剣に振り返り、そこで犯した過ちも回避する必要はないでしょう。これらの回想による痛みを気にすることもないでしょう。

変革の時代であるいま、NGOという名称は、私たちが活動に従事している時には一定の意味合いを帯びていました。わたしたちNGOは犯罪活動となんら関係もなく、むしろ政府部門の不作為と密接に関係していると言えます。まさにそうであるがゆえに、私たちは社会から一定の注目を受け、メディア、研究者、そして労働者からの注目を受けています。実際、NGOに対する政府の影響はどの国においても不可避ですが、問題はそれらの影響がどのような方法なのか、ということです。わたしのNGO組織は労働者からの要請に応えて、利得社の労使紛争に介入しましたが、その活動は積極的、向上的、進歩的なものでした。

長年、地方政府はGDPを最優先にして、他の一切を犠牲にし、一切は政治の業績のために、一切は安定第一で経済成長するためのものです。彼らは労使の矛盾が激化していることが分からないのでしょうか。さらにはこの様な考えに基づいた経済成長が続くと、労働者や農民工が最大の被害者になることに、考えが及ばないのでしょうか。これら大衆はそのことをよく知っています。私自身も国有企業をレイオフされた労働者です。「高層ビルには長い影、ネオンの下には血と涙」。これこそが労働者農民を映し出す姿なのです。

従来の無組織の極端な行動に比べると、組織的な権利擁護の方法は疑いなく一種の理性的で進歩的なものです。利得社労働者の権利擁護活動の成功は、まさにそれを反映したものでした。この集団は争議の過程において、不安定になるかもしれず、また各種の暴風に遭うかもしれませんが、しかし必ずこの過程を経る必要があるのです。深く眠らされた労働者を呼び覚ます必要があるのです。かれらが自らの立場に立ち、みずからの権利を主張し擁護し、難関を突破し、闘争を堅持し、労働者組織を信頼し、集団的力量に依拠することで、勝利することができるでしょう。わたしは彼らにその勇気があることを信じています。そしてそれ以上に彼らが勝利をかちとることを熱望しているのです。