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新型コロナ拡大で退職通知  製造会社、中国実習生に「不当扱い」増える恐れも

(「共同通信」 2020年03月10日)

 新型コロナウイルス感染症の拡大を理由に、埼玉県越谷市の製造会社が、中国人技能実習生の女性(33)に2月付の退職を通知していたことが10日、関係者への取材で分かった。中国に一時帰国し、訪日規制の対象外地域にいたため日本に戻れた女性に対し、待機を指示。その後、実習中断と退職の同意確認書を送った。女性は退職に同意していない。労働問題に詳しい弁護士は「不当な退職勧奨だ」と指摘している。 感染拡大の先行きが見えない中、こうした立場の弱い労働者への不利益な扱いが増える恐れがある。外国人労働者の支援団体は、女性の例は氷山の一角とみて情報提供を呼び掛けている。

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緊急特別シンポジウム「コロナウイルス渦とアジア防疫食品安全システムの構築」開催

伊藤 彰信

シンポジウム「コロナウイルス渦とアジア防疫食品安全システムの構 築」
シンポジウム「コロナウイルス渦とアジア防疫食品安全システムの構築」

 緊急特別シンポジウム「コロナウイルス渦とアジア防疫食品安全システムの構
築」が、3月19日、参議院議員会館で開かれた。国際アジア共同体学会、一帯一
路日本研究センター、アジア連合大学院機構が主催したもので、60名ほどが参加した。
 シンポは、共同司会を中川十郎(日本ビジネスインテリジェンス協会理事長)、江原規由(国際貿易投資研究所主席研究員)、挨拶を谷口誠(元国連大使)、伊佐進一(衆議院議員、日中次世代交流委員会事務局長)、林敏潔(南京師範大学教授)、基調報告を矢吹晋(横浜市立大名誉教授)、大西広(慶応義塾大学経済学部教授)、高橋五郎(愛知大学名誉教授)、大野芳一(一帯一路促進会代表)、今井敬喜(健康福祉実践協会理事長)、問題提起を范云▲(▲はさんずいに寿)(亜細亜大学教授)を司会に、岡田充(共同通信客員編集委員)、坂東賢治(毎日新聞論説室専門編集委員)、まとめの発言を進藤榮―(一帯一路日本研究センター代表、国際アジア共同体学会会長)が行った。

日本と中国が知恵を出し合い、協力して行くことが重要

 専門は異なるが、それぞれの分野では第一線の立場の人が新型コロナウイルス
問題について集中して発言したシンポはとても興味深かった。特に興味深かった 発言についていくつか紹介してみたい。
 林敏潔さんは「中国は日本からの支援に感謝している。中国人の日本を見る眼が好転した。これからは中国が恩返しをする番。2月には検査キッドを12,500本送った。9月にはワクチンを届けることができるだろう。日本と中国が知恵を出し合い、協力して行くことが重要」と語った。マスクは、来週には中国から日本に輸出されるようになり、医療関係者など必要なところから行き渡るようになった行くだろうという話もあった。

林敏潔(南京師範大学教授)

 日中関係が好転したのかという問題について、日本側の参加者からは「日本人
は中国をますます敵視するようになったのではないか」という発言が多かった。「外交の安倍は、ロシア、北朝鮮でも成果を上げられず、習近平主席を国賓として招待して成果を上げようとしたが、右派の反発が強かった。2月25日頃、東京オリンピックを予定通り開催することを第一義にする政策に転換した。しかし、誰が見ても予定通りの開催は無理」、「リーダーシップの質が問われている」。

アメリカでは医療を受けられない低所得者層に新型コロナによる死者が増大する

 トランプが「中国ウイルス」、麻生が「武漢ウイルス」などと発言しているが、「今回のウイルスは人工的に変異したものでないので生物兵器ではない。昨年10月18日~27日、世界109カ国が参加して武漢で第7回世界軍人運動会でが開催されたが、参加したアメリカの軍人5人が武漢の感染症病院で診察を受け、2人が入院している。そこで拡散したのではないかと中国は疑っている。アメリカでは報道されているが、日本では報道されていない」、「インフォデミックといわれるデマ情報が世界を混乱させる方がパンデミックより恐ろしい」。
 「アメリカはインフルエンザで2万人以上の死者を出している。皆保険制度の
ないアメリカでは医療を受けられない低所得者層に新型コロナによる死者が増大するだろう。大統領選にも影響する問題であるが、トランプが負けても自国第一主義は変わらないのではないか」。

 「ウイルスは核酸とタンパク質の塊であるが、代謝能力を持っていないので生
物に寄生している。今までは土壌のバクテリアに潜んでいたが、農薬散布によって土の中の微生物が死に、小動物にも潜むことが多くなったのではないか」、
「免疫には自然免疫と獲得免疫がある。微生物による自然免疫力をつける漢方医学の考え方が重要」、「日本の食料自給率はカロリーベースで37%。輸入野菜、穀物にはすべて農薬が使われている」。

東アジア・ヒューマンセキュリティーシステムの構築を

 「コロナショックはリーマンショックを超える不況になるだろう。日本経済へ
の打撃は大きく、アベノミクスの失敗が露呈する」
 進藤先生のまとめは3点。第一にアジア経済が一体化している現実を直視する
こと。第二に日米同盟ではなく日中関係の強化が必要なこと。第三に危機は社会を変えること。具体的には、自国第一主義を捨てて脱「新自由主義」経済社会戦略を展開する、脱国境型の都市連盟をつくる、軍事安全保障戦略から脱却し防疫・防災を重視し食料安全・エネルギーと持続可能な発展に向けた「人間安全保障」戦略へ転換する。軍事力の強化は相手への不信から出発している。同盟ではなく連携が必要。東アジア・ヒューマンセキュリティーシステムの構築を。