訪中報告2024.9.2~9.6

伊藤彰信(日中労交会長)

 このたび、中国国際交流協会のご招待により、9月2日から6日までの5日間、中国を訪問し、北京、福州、泉州を訪問してきました。訪中団は、日本NPO法人世界、日中友好協会、ベルボ会、国際IC日本協会、創価学会、日本青年会議所、日中労交の7団体9名です。団長を務めた日本NPO法人世界理事長の中田選さんは広島県議を長く務めた公明党の議員です。参加者の政治傾向をみても、公明党、自民党、立憲民主党、共産党、社民党・新社会党ということになります。

 正面右が劉洪才副会長、一番左が伊藤氏

 北京での中国国際交流協会の劉洪才副会長のあいさつは次のようなものです。古くから日中友好運動を行っている日本の7団体の一行とお会いできて嬉しい。皆さん方はそれぞれ長い間日中友好の活動をおこない、友好交流を具体的に積み重ねてきた。いま、日中関係は厳しい状況であるが、両国関係を後退させることなく、前進させなければならない。国交正常化は戦争状態を終結させて、両国関係を発展させることであった。今、戦争状態に戻すことがあってはならない。敵をつくることではなく、友達をつくることである。両国関係を順調に平和的に友好的に発展させなければならない。持続可能な発展を強化し、改革開放をすすめ、中国の現代化を進めるためには平和的な関係が必要である。新しい発展を通じて友好関係をつくるために民間団体が努力しなければならない。

 劉洪才副会長との面談に先だって「新時代の要求に合致する中日関係の構築に民間の力を貢献する」座談会が開かれました。中国国際交流協会の朱桂傑副秘書長が進行役になって、中国側の専門家・学者と日本側の参加者との意見交換が行われました。

 清華大学国際関係学部の劉江永教授が、最初からストレートに問題提起をしました。彼の話は次のようなものです。新時代とは、ウクライナ戦争、パレスチナ問題が起き、東アジアでの平和は保たれているが、第三次世界大戦の前夜とも言える状況である。8月29日にサリバン米大統領補佐官が訪中し、「ひとつの中国政策に変わりはない、新冷戦を繰り広げるつもりはない、中国の国家制度を変えようとはしない、中国が同盟関係を広げることに反対しない、台湾独立を支持しない、台湾を紛争の道具に使わない」とアメリカの立場を述べた。中国はアメリカを最大の競争相手とみているが、追随するつもりはない。日本は日米同盟を強化すると言っている。日本政府は独自の対中政策を持ち合わせていない。アメリカの言うとおりに動く。日中関係が動くとしたら、米大統領選挙後だろうと述べ、暗にトランプが当選することを期待しているようだった。そして、尖閣問題を持ち出し「尖閣列島は中国の固有の領土である」と説明した。

 中田団長が「政治問題については、伊藤さん答えてくれ」と振るので、日中労交が50周年を迎えたこと、南京に「日中不再戦の誓いの碑」を建てる際に中国国際交流協会にお世話になったことにお礼を述べたあと、次のように述べました。日中友好運動は平和運動だと信じていたが、今では中国は仮想敵国であり、日中友好を語ることが敵国の手先と非難されるようになった。今年の春闘は大手で満額回答、防衛産業では要求を上回る回答があった。防衛予算が大幅に増額されたからである。労働者が賃上げするためには、防衛産業で働くか防衛産業に協力することである。麻生氏は「戦う覚悟を持て」と言ったが、意識レベルの問題ではなく、今や産業・社会の状況が戦闘態勢になっている。「拡大抑止」とは核抑止であり、アメリカの核の下での核戦争が準備されている。今年の原水禁世界大会長崎大会での中国人民軍縮協会の安月軍秘書長の「核兵器相互先制不使用条約」の提案に関する発言は素晴らしかった。中国は平和国家なのだから、中国がグローバルな平和・軍縮のイニシアティブを発揮してほしい。

 夕食会で私は関東大震災中国人受難者追悼式の話をしました。劉教授と隣の席でしたので、「今、領土問題を持ち出すことは敵対を煽ることになる」「尖閣問題は棚上げになっていると中国側はなぜ言わないのか」「アメリカのジャパンハンドラーが日本政府を完全に牛耳っているから、米大統領選挙でトランプが勝とうがハリスが勝とうが対日政策は変わらない」などと私の意見を述べ、議論をしました。関東大震災で密殺された王希天さんのお孫さんで毎年メッセージを送ってくださる王旗さんは精華大学の先生だということを初めて知りました。出発前日に木野村間一郎さんから預かった「山河慟哭」を寄贈してきました。もちろん日中労交をアピールするため、「南京に『日中不再戦の誓い』の碑を建てて」、記念集会プログラム、バンダナ、リーフレットを日本側の参加者、中国側の参加者に贈呈してきました。

 福建省に行くということなので、台湾との交流の実態を見ることができるかと思っていましたが、出来ませんでした。泉州海外交通史博物館などの見学は、宋元時代の貿易を知る上で私には興味のある見学でしたが、「琉球との交易がすすんでいたんだ。尖閣は中国の領土だ」とアピールしているようにも思えました。

 「以民促官」とは、官が言えないことやれないことを民が率先して言いやることによって、官を動かすことです。民が官と同じこと言っていたのでは、「以民促官」にならないだろうと感じました。中国国際交流協会が日本の様々な団体と交流関係を持っていることに感心しました。この7つの団体は日本で相互に協力して日中友好運動をしているわけではありません。初めて中国で顔を合わせたわけです。中国国際交流協会が持っているつながりが重要な役割を持っていることを感じました。


【参考資料】

「原水爆禁止に関する世界平和会議」開会式でのスピーチ(2024年8月7日、長崎)
安月軍(アン・ユエジュン)中国人民平和軍縮協会事務局長
 安月軍の全文PDFはここをクリック

平和共存五原則発表70週年記念大会におけるスピーチ(2024年6月28日)中華人民共和国主席 習近平

習近平国家主席の全文PDFはここをクリック